蒲生へ(2006.04.27)
朝から越谷の、蒲生へ。 スーパー歌舞伎の稽古でよく行った場所。今日は「雪之丞変化2006」の通し稽古を見に。 広い中日劇場の舞台がそのまま取れて、道具の立て込みも出来る大きなスタジオだ。 最近はプロレスの試合なんかでも使われている。
まだ一部止めながらではあったが、一応、通しの稽古。 今回2001を改訂して、06版にしてある部分が、ケッコウ上手くいきそうな可能性が見えてきた。 まだまだ試行錯誤の余地はあるけど、近未来ではなく、今を描くのだというテーマが、もっと浮き彫りになれば、改めてやる意味のある舞台になるなあと思った。 稽古後、この先の練り上げについて、右近さんや笑也さんとちょっと話す。 今までヤッタ雪之丞は、近未来を描くということになっていて、つまりそれはファンタジーであり、歌舞伎という様式美の世界が、意外にマッチするということを我々は、猿之助さんから学んだが、今回はあくまでも今(現代)である。 これは、単純に様式を宛てても、表現できない。 何よりも、ある意味、気持ち優先のリアリズムが欲しくなるところだ。 そう言う意味で、今回、また我々が新しい境地にチャレンジする良い機会であるわけで、是非、そこんとこ頑張ろうじゃないかという話しになった。 これからの進化に大いに期待したい。
帰りは、猿弥さんの車に乗せてもらって、家まで送って貰った。実はご近所である。特に、犬の実家(犬屋)がすぐ側だ。 猿弥さんともひとしきり、芝居の話をしつつ帰った。 彼も歌舞伎界では、すでに活躍の場を持つ人だけど、私は歌舞伎を越えて、もっと多方面に進出できる人だと思っている。 今回は、時代劇部分での大敵役とはまた別に、現代劇部分でちょっと面白い役をやっている。 時代劇はもう立派なものだけど、もう一つの方も、是非、面白くして欲しい。 金田龍之介を継ぐ人だと思ってるのよ、と告げておいたけど。私は割と本気でそう思っている。送って貰ったから、お世辞言うわけではなく、本当に潜在能力の高い役者なのだ。 ただ、器用すぎるのと、立ち回りが如才なさ過ぎるのとで、なかなか本質の凄さが、人に知られない。 今、おもだか一門は試練の時だから、それぞれが、少しずつ無理をしてでも、今までにないパワーを出して行かないとイカンのである。 今回、初めて演出助手についた則岡クンが、大活躍。多くの方々に感謝されていて、私も鼻が高い。 さっそく大福を差し入れておきました。 ホリエモン保釈の夜に。
土曜日とか(2006.04.24)
土曜日は、劇作家協会の理事会。 いろいろ取り決め。今、協会は財政難で非常に大変。しかし、ここに、ここ4年ほど理事をサボっていた平田オリザ氏が、専務理事として、復帰。 このポジション、実はこの2年私が任されていたところなのである。その名前は地味だが、実務一切お取りはからいよろしく、みたいな大役だ。 しかし、そんな役目が私に務まるはずはなく、ボーンやりしている間に月日は過ぎ、ただ財政難が訪れたという、体たらくなのであった。 でも平田氏は、やはり凄かった。復帰するなりテキパキと指針を示し、方針を打ち出し、一気に形勢挽回の様相となる。 財政難は深刻なのに、彼の話を聞いているだけで、何やらもう大丈夫だという気分にみんななった。 彼は総理大臣にしても、立派にやる人だと思う。
その後、時間がないので、ちょいだけ髪切り。表参道で。
それ以外の時間はずーっと書き仕事であった。 明日は朝から『深夜劇場へようこそ』収録。ゲストは、ナイロンのみのすけさんと青年座の山路和弘さん。 さて、犬である。 3ヶ月のヨークシャーテリアなのであるが、これがやたらと噛む。手を噛み、足を噛み、机もジュータンもひたすら噛む。 生え立ての歯がかゆくてたまらぬそうだが、困るのはそれが時に、とっても痛いことである。 最初は、あまーくハグハグだったのが、最近は、テメーそれマジ噛みじゃねーかという噛み方をする。 お陰で、手足傷だらけだ。 まだ赤ちゃんなので、うるさいことは言わずに、のびのびとと思っていたのだが、このままでは、今後の暮らしが思いやられるので、そろそろ対策を練らなくてはならない。 そのためにいろんなハウツー本とかも買い込んでみた。 んが、書いてあることを試しても、なかなかそーはいかぬ気配である。 噛んだら、しばし無視して、おとなしくなってからまた遊びに付き合い会いましょうとか言うのだが、遊ぶや否や噛み始めるので、そんなことしたらずーっと無視の時間になり、まったく遊びにならないのである。 だんだん情けなくなってくる。 でも、眠たくなってきた時とか、寝起きとかは、天使とはこいつのことなのでないかと思いたくなるほど、穏やかで、可愛らしい。 何という無邪気な寝姿よ。 元気全開で暴れ回っている時とは、まるで別犬のようである。 あんまり愉快な例えじゃないが、若き日の、お酒を飲んでアクセル全開になった時の杉山良一氏みたいだなあ、と思った。 彼もマタ、別人のようになるので、ギズモと言われていたものだ。
還暦(2006.04.20)
火曜日、国文祭のプロデューサー菊地さんの還暦パーティがあった。 なぜか、名前だけ演出ということになっておった。 そんでプロデューサーは菊地さん。 還暦を祝われる本人が仕切るのである。ないよな、普通、そんなの。 最初はうちうちのお楽しみ会みたいな話しだったのが、集まる人数がどんどん膨らみ、演し物などもあまりに大がかりすぎて、ついにご本人にしか仕切れない大イベントになってしまったのである。
エンタテイメント界の重鎮ら、七百人以上が結集したパーテイ会場を見ながら、ある人が、今ここで大爆発起きたら、ショウビジネス界壊滅だな、と呟いておられたような、VIPの集会でありつつ、ジュリーとか、木の実ナナさんとか、内田裕也さんとかが歌いまくるという豪華ステージまであったのだ。
わしなど名前は演出ということにはなっているが、茫然と眺めているしかない場面の方が多くて、かえって変な疲れ方をしたのであった。 にしても、たった一人の人間がただ六十年生きたというだけで、これだけの人が集まり、祭りが生まれる。 どなたかが、別にノーベル賞とったワケでもないのに、と冗談で言っておられたが、こういう力を人徳というのであろうよ。 まったく同感。
菊地さんの会だから、ダーッとやろうよ、と言う感じが、世話人からゲストまで、みんなにみなぎっていて、ものすごいパワーであった。 内田裕也+沢田研二のコーナー(なんというコラボ!)のジョニBグッドのところで、我が扉座ダンサー20人がフロアに飛び出して、乱舞するという演出があったのであるが、ここが私にはもっとも胃痛ボイントで、登場時間が迫るにつれ、逃げ出したくなる心境であった。 自分でやれと言っておいて、ナンなんだが…… ナンじゃ、お前ら!と、怒られてまうんじゃなかろうか、と。 特に裕也さんは、登場から銀の杖をずっと持っておられて、あれ痛いだろうなあ、という感じであったのだ。 だが、我が軍もよくやった。 井上堯之氏のギターで、ジュリー・内田裕也のデュオなんて、Jロックの歴史を知る人なら、誰もが涙なくしては立ち会えないシーンだけど、宴会に来た年配のお客さんたちが、踊り出すということはないわけで、若い彼らの登場で、ステージも俄然盛り上がり、ジュリーも裕也さんもかなり熱くなっていた、と思う。
それやこれやで、まあ予定通りとはいかないところも多少ありつつ、お集まりの皆様には好評だったようで、わしのミッションは何とかクリア。 その後、青山のナンかプールがあって、すっげえ夜景のキレイなビル屋上レストランで、二次会。 開放感ととともにエグゼになった気分を味わう。 我が永遠のアイドル・ジュリーが良いのは当然として、もう一つ個人的には、井上バンドの「太陽に吠えろ」と「傷だらけの天使」が、グッと来た。井上さんはホントにカッコイイ。国文祭の時、マリンメッセで下さったスピーチもステキだったけど、このパーティでのスピーチも最高だった。
ああいふ、大人に私もなりたい。
あと、赤星がついに、ワイルドワンズの鳥塚しげきさんと遭遇する。 名作「無邪鬼」で、棟梁から、「お前、鳥塚しげきみたいな顔してやがって」と言われ続けていたのである。 確かに似てますねえと、一同感心。
もちろん生「思い出の渚」も聴いた!
忙しい2日ほど(2006.04.13)
早起きが続いた。と言っても、正しい勤め人の人からすれば、何が早いの?って感じだろうが。
一昨日は、雪之丞変化の稽古場に。 01年改め、06年版の製作が進んでいる。
いろいろ書き直したり、稽古場対応で変えなきゃいけないとこなど、チェックしに行く。 16年前の芝居なのである。 つい最近までやってたような気がするが。 ずっと中村信二郎さんがやってた、雪之丞役を今回は段治郎さんがやる。 初演の時、江戸の男1って役でデビューした新鋭だった。 それがついに主役である。まあ、すでに一昨年、猿之助さんが倒れた時、スーパー歌舞伎「新三国志Ⅲ」の主役代役までやってるんだけどね。
これがなかなか良い。 信二郎さんのいかにも実直そうな味わいも好きだったけど、段治郎さんには若者らしい勢いと、男っぽさがある。 現代劇も出来る人だなあと感心した。 いつものメンバーはますます頼もしく、芝居を支えてくれるだろう、てか、もう芝居は手の内に入ってるので、まだ本息になってないな。 そんな中、右近さんが、演出も兼ねて、獅子奮迅である。
扉座からただ一人参加の鈴木トシノリ君、なぜか稽古場でモヒカン刈りになっていた。 しかし彼の場合、頭髪を一度剃るともう二度と生えてこない危険があり。仕事とはいえ、大決心だ。外部の仕事だから、断れなかったのだろうか。ちょっと心配。 その後、劇作家協会戯曲塾へ。 最終講義のあと、お別れ呑み会。伊代と達哉が、殊勝にお礼を言いに来た。この体験が何かの役に立つことを祈る。 翌日は、朝から富士見ヶ丘小へ。 今年も第一回目ま演劇授業は扉座ワークショップから。
トシノリは頭にバンダナを巻いてやって来ていた。 子供たちから、世カチュー(白血病)?とマジに聞かれていた。
3年目の威力と、2月にやった卒業公演の面白さの成果だろう。 素晴らしく気合いに満ちた生徒たち。 演劇ヤルのが楽しみだ状態で、待っていて、すっかり世界にハマっていた。 長くあちこちでやって来たけど、こんなにレベルが高いのは初めての経験であろう。 今までの取り組みが間違ってなかったとしみじみ思う。 たぶん、劇団員たちも今日の教室はストレス0だったはず。打てば響く心地よさがあった。
初参加の、研修卒業組の上土井の方がよっぽど、おどおどして、空気になじんでいなかった。
その後、目下の大事業の打ち合わせ、夜まで。
今日も朝から、打ち合わせ。 福岡の国民文化祭プロデューサーのハンズの菊地さんの還暦祝いのパーティの件で。なぜか私が演出担当。 いろんなゲストが参加して、もの凄いディナーショウのようなパーティなのである。 しかも、それを祝われる本人が陣頭指揮でプロデュースしている。 可笑しいと言えば、可笑しいが、まあ、還暦なんていって赤いチャンチャンコに収まるようなお方ではないので、これで良いのだと思う。 何より、大規模すぎて、こんなもの菊地さん以外には仕切れません、というのが実情である。最初はハンズの社員と私ら数人で内緒にしてやりましょう、みたいな話だったのだが…… その司会が名アナウンサー、露木茂さんで、その打ち合わせだった。 さて、それやこれやで、留守がちであったが、その間、チビ犬を放置せねばならず、心配で心配でならなかった。 オリに入れて、出掛けようとすると、どっからそんなトーンが出るのだという、淋しげ声で、引き留めるのである。 今日、帰りがけ、犬の実家(ペットショップ)に寄って、不足用品を買いがてら尋ねたら、それでもたまには孤独にも慣らせないと、後々、大変なことになるから、と言われたが。 悩ましい。
最後に、とちぼり君が、公演の時、私から祝い金を貰ったと大々的に書いてあるが、まったく誇大な表現なので、よろしく。 ほんの気持ちで、三十万ほど置いて来たぐらいで、そんなに騒がないで欲しいと思うぜ。恥ずかしい。
矢の如く(2006.04.10)
時が過ぎて行く。 人生で一番、早く時が去っていかないか?
というか、歳をとるごとにそんな感じになってるから、これから先、もうゆっくりになることはないのだろうな。
打ち合わせと執筆と、雑用と。 ひたすら繰り返す日々である。
昨日は神楽坂に、とちぼり木と彩子さん夫婦の芝居を見にいった。 黒テントが新しく開いたアトリエ劇場。 今はバラエティなどの放送作家として活躍しているとちぼり君、しかし当日配りのシートの中に、その履歴として未だに、扉座で私の助手をしばし勤める、みたいなことを書いている。 律儀な男だ。 彩子さんもうちのスタッフをやってくれたことあるしな。 一言で言って、不思議な芝居だった。放送作家っぽいポップさがありつつ、妙に細やかな心の傷の疼きのようなものをすくい取ろうとしたりして。 しかし私としては、その塩梅が、中途半端な気がしたので、一度、サービス抜きで、極めてリアルな芝居をやることをお薦めしておいた。 放送作家とか、やってるとフットワーク軽ーく見られたりするものだけど、実はワシなんかよりもずーっと、繊細でふかーく物事を考えていたりする人が多いのだ。 とちぼり君にも、そういう感性の面白さがある。 それは一見つまらなそうだけど、実は、そういうことの方が面白いのだ。だって人間だからね。 実を申せば、この世の中、誰もかるーくなんか生きちゃいないよ。 そういうことに照れずに、自分に向き合い、じっくりと取り組んでみるのも芝居の醍醐味だ。 美術家・彩ちゃんの空間は、お金をそんなにかけないながら、センス良くまとまっていた。すっかりプロになってるな。 明日は雪之丞の稽古と、劇作家協会戯曲塾最終講義。
犬が来て明日で一週間。 まだ片時も目が離せない感じなので、よほどの用がない限り、外出しない人になっている。 お陰で、パチスロのこともすっかり忘れた。 仕事がガンガン進まないのは、残念だが…… ただし明日から、外出続き。 お留守番が続いてしまう。 限りなく心配。
4月になってた(2006.04.06)
エープリルフールに、十数年目!という結婚記念日があったり、その翌日はご親戚系の集まりもあったり、3日は、雪之丞の稽古始めと、うちあわせ一件と、その後に入所式、それから花見と。 めまぐるしくいろいろあった。
んでついでに昨日、犬まで買った。 これは発作的ではなく、昨年辺りから、良い出会いがあれば、と思ってたんだが、先日、花見がてら近所にあった犬屋にたまたま入ってみたら、出会ってしまった。
たいしたことないと思ってた犬屋が、いろいろ話すうちに、なかなかの名店であったことに気づき、ついでに、抱いてしまった。 これが運の尽きであった。 まあ、ゆっくり考えてみます、と一度は帰ったものの、その時点で、もはや、考える余地などなくなっていたのである。
なので実を申せば、花見の時には、すでに気持ちは決まっていた。 ただ、購入資金は、例のパチスロ貯蓄で賄われている。しかしはっきりいって、ジェラルド・ジェンタよりずっと安い。 まあ、これは値段の問題じゃないんだが。
今、これを書いてるのは、丑三時みたいな、真夜中であるが、私の足下には、小さな黒茶色い毛むくじゃらがいる。 昨夜は檻に入れて寝かそうとしたのだが、一晩、ぴいぴい鳴きおって酷いことになった。 で、仕方なく今日は、夜からは私の仕事部屋に入れて、好きにさせておいた。 最初は、いろいろいたずらもしてたけど、そのうち、勝手に寝始めて、静かなものである。 名前は「北斗」とか「アラジン」が良いと思ったのだけど、たぶん、もっと穏やかで上品なことに収まるのであろう。
てかもう、別の名で呼ばれ出してる。
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