2005年08月                             

ネットのチカラ(2005.08.31)

思わぬ人から質問を受けた。
花びらの当たりって、何?

何のことかと、私が思ったが、万博のタイヘン大講演会のことであった。

その演し物の最後に、博士が未来への祈りを込めて、サクラの花びらを数十枚ほど、強力送風機(別名カマクラ)の作る風に乗せて飛ばすのだが、その中に数枚当たりがあるのだ。

大吉とか、願い事適う!とか、待ち人来たる!なんて、メッセージが印刷されたというか、刻印されたはなびらが混じっているのである。
まあ、それだけのことではっきしいってたいしたモノじゃない。

でも、その収集が密かにブームになっているらしいのだ。
パビリオンのどの席に座れば、それがゲト!出来る、なんてことがいろんなとこで話題になってたりするらしい。
というか、確かめたら、確かになってる。
そして、オレはこんなのゲトした、とか自慢し合ったりしているのだ。

基本は、オレにその製作を命じられた赤星が、名古屋の町で作ってきたハンコみたいなものなんだが、その後、スタッフや関係者、いろんな人が面白がって、ハンコやスタンプなどさまざまなバージョンをこしらえては、寄付してくれた。
山根さん、製作の当たりもある。
アトリエカオスも、博士のイラストのハンコを手作りで作ってくれた。
その後もコレ使ってくれ、という申し出も多々あったらしい。
そのハンコを使って、博士が楽屋で当たりはなびらを作っては、他のはなびらに混ぜ、毎回、風に飛ばしているのである。

もはやオレでも、知らないような当たりもあるらしい。
ネットには、それらを並べて掲載しているところもある。
 
そもそもはラストシーンで、すっげえ花吹雪を、リアル風に乗せて、客席に吹き付けたいと言いだしたのであった。
新三国志パートⅢのラストシーンみたくね。
もう場内一杯にウアーっと。

風力発電は江古野博士の大切な武器であり、その源が風なんだから。
本当の風をお客様に体感して頂きたかったのである。
しかも、そこにはなびらを付けて、豪華に美しく!

んが、一日20回の公演で、毎回、そんなはなびら飛ばしてたら、掃除が間に合わないし、消えモノの経費も嵩みすぎる。
頼むから、やめて下され。
と愛知県及び電通から、懇願されたのだった。

んじゃあ、オレは下りるよ、とも子供みたいなダダこねて何とか通そうと画策したが、他のスタッフも毎回の掃除のタイヘンさや、水の装置への影響などを心配し、まあここは堪え忍んでと私の説得にかかったのであった。
 
まあ、私もダダをこねる子供の常として、内心は無理だろうと思いつつ、ダダをこねていたのだが。

でも、何にも全部ナシにするのは悔しいし、何よりはなびらは良いアイデアだと思っていたから、一部、妥協のカタチで、現在のカタチにしたのである。
それでも掃除がタイヘンの声があったが、はなびらはきっとお客様が持って帰ってくれます、と言い放った。
実際、スーパー歌舞伎でも、ケッコウ拾って帰ってたからね。こういうのは記念になるんだよね。
ただ、それだけじゃ、あまりにチープで面白くないから、中に秘密のいたずらを仕掛けることにしたのである。

それが今、ようやく知られて密かな話題になっているというわけだ。
半分はネットの威力だと思うが。

先日行ったときも、何度も来ているらしき子供たち数名が、終わるやいなや、客席を走り回り、はなびら拾いに没頭していた。
素晴らしい!

もっとも最初の頃は、ほんとうに客が少なくて、はなびらも、飛ばしっぱなし。
1億円大当たり!のはなびらも、黙殺されて踏みつけられている状態だった。(そんなのないけど……)
いや正確に言えば、踏みつけるほどの人数もいなくて、ただ傍らを人々が通り過ぎていたのである。
当然の事ながら、毎回掃除がタイヘンで、私はちょっと肩身が狭かったのである。
みんな拾って帰るって言ってたじゃん、どーなってるの、演出家!って感じ。

余計な仕事を増やして、ホントすまん。そんな感じだった。
それがここに来て、密かなブーム炸裂である。

ロングランというのは、こういうことがあるから面白いよね。何しろ三千回以上の公演だからね。
しかもネット時代で、口コミの速度と規模が、昔とはダンチである。

今や予定調和みたいな拍手も起こっているのだ。
かけ声とかさ。
リピーターが多くて、次に何が起きるか知ってるし、役者をのせようとかしてくれてる。
まるで歌舞伎みたいだ。

万博見学には向いてなかった扉座の人たちだけど、いつか機会があったら、自分の劇団でこういうことやってみたいとつくづく思う。
見学はダメでも、やるのは有りだろ。

もっとも劇座の人たちほど真面目じゃないから、たちまちダレ切ったり、アテンドとかにちょっかい出して、問題になったり、心配の種は尽きないとは思うが……

にしても劇座はよくやってる。
頭が下がります。
 



愛知ツアー(2005.08.30)

 豊橋へ行き、ワークショップに参加。
 ここで懐かしい人と再会。福岡の文化祭開会式でお世話になった、歌唱指導の江端先生。
 今回の豊橋企画に参加して下さっているのだ。元々名古屋の大学の先生なので、こちらは地元。
 相変わらず、明るくパワフルで、丁寧な指導で、観ていて楽しい。博多での汗と涙の日々からそろそろ1年になるが、たちまち思い出が蘇った。
 豊橋の参加者たちは、皆、やる気に満ちて頼もしかった。扉座の人々も、途中台風をはさんで、四日間のワークショップを、手抜きナシでやり遂げた様子。
 最後の日だけの参加だった、私が一番、落ちこぼれであった。
 でもまあ、ここは茅野のホームなんだから、私はサポートに徹するつもり。
 茅野イサム三十数年ぶりの里帰りなのである。
 そのうち発行されるであろう、イサム自伝に書かれるだろうけど、故郷の豊橋を中学の終わりに去った時は、思春期の浩一少年にとってはかなり辛いものであった、という。
 口の悪い私は、夜逃げだった、なんて人の人生の出来事を面白おかしく脚色して言いふらしているが、もっと複雑な事情と状況があったらしい。
 それが縁あってこうして、その場所に帰ってきている。出来れば、これが凱旋となって欲しい、と私は祈っている。
 観てきた限りでは、きっと上手くいくと確信。
 今まで厚木にしろ、福岡にしろ、扉座の地方活動は私の故郷周りばかりだったが、はじめて私の縁ではない場所での展開である。
 こういうことが上手くいってくれると、とても嬉しい。
 私にとっては、新しい故郷作りでもある。 

 さて、翌日は、扉座の人々と万博へ。
 しかし、何しろ人大杉!
 せめてマンモスくせらいは見せてあげたいと思ったが、ショートカットも九十分待ち。

 ところでマンモスってナンすか……

 明け方まで呑んでいたという、岩本クンの完全に逝ってしまっている眼を見ていて、こんな状態の人たちにそんなもの見せても、まったくのムダと思い、結局、メインのものは何も見学せずに、宛てなくプラブラした。
 途中いくつか外国パピリオンなんかも案内したけど、扉座の人々、基本的に反応ナシであった。
 
 結論。
 劇団に万博見物は向いてないと思いました。
 
  
 
 
 
 
 



東京、豊橋、名古屋……(2005.08.28)

 台風の日は、青山に行った。直撃前で、たいして濡れることなく観劇。
 イノッチもひろしクンも、難しい本格的ミュージカルをよくやってる。
 見せている。
 何よりも本人たちの仲の良さが伝わってきて、それが物語と重なり、舞台に心地良い風を吹かせている。
 これであと少し、歌唱力が上がればなあ、と思った。
 二人とも歌手なんだけどなあ。
 ミュージカルとなると、しかも輸入物だから、本人たちのキーとかにお構いなしの容赦ないガチンコ勝負だからね。その上、完全な生演奏で、誤魔化しもきかないし。
 まあ、このミュージカルが完璧にやのこなせたら、化け物だけどね。もともと二人の年齢にも無理はあるんだし。
 
 ともかく大きなチャレンジで、今後の財産になることは間違いない。
 誰に言われなくても、自分たちですでに課題を見つけて、心に喫するところはあるだろう。
 彼らはまた成長している。
 こちらも、がんばらなくては、その水準に応えられなくなると、自分のふんどしを洗い直しておく。

 にしても藤木孝さん。まるでオリジナルキャストみたいに、すっぽりハマり役だった。素晴らしい。あと、ラッツアンドスターのクワマンのミュージカル能力にびっくり。声量あるし、品よく脇役に収まるし……
 この人ととか、グッチ裕三とか、本当のエンターテナーなんだなあと、しみじみ思う。

 彼らは共演者にも恵まれている。

 ひろしクンに、大和演劇発進したからな、と報告しといた。
 扉座が始めたワークショップのことだ。
 将来、大和に劇場が建つときには、二人でこけら落としをゼッタイやろうな、と約束しているのである。
 ひろしは南林間、ワシが中央林間、加えて六角が東林間の林間公演だ。東は相模原市だけど……
 今はまだ素人三十人が公民館に集まっているだけだけど、ワシの中ではそういう構想になっているのだ。

 んで、いろいろあって、明日は豊橋へ。
 同じく、扉座で請け負った豊橋市政百周年企画の市民参加公演のためのワークショップだ。
 こちらは豊橋出身の茅野が主軸。
 ただいま総勢、老若男女取りそろえて百人ぐらいいるらしい。これも大事業である。
 これまた、新しく劇場が建つ時は、茅野と豊橋の英雄・松平健で、こけら落としをするように、私はこれから画策するつもりだ。
 ちなみに豊橋の名物は、チクワと鬼祭りなんだって。
 さすが、茅野の故郷である。
 鬼が祭りになっとるんだワ。
 この際、茅野の鬼と、健さんの桃太郎侍かなんかでどうだ。健さまの持ち役と違って具合が悪いというなら、暴れん坊・桃太郎将軍でどうじゃ。

 んでんで、明後日は、万博に。
 いよいよあと一ト月だ。
 ここに来て、講演会はかなり人気になってるらしい。
 中部ぴあの何とかランキングで一位とかなったらしい、と報告を受けた。
 でも、ライブ部門、ってのがイマイチ気にくわない。
 私の野望は、あくまでも「例の空き家」や、「古代象の死骸の頭部」に勝つことなのだ。

 規模から言えば、楽天がヤンキースに勝つより大変なことだけど、ずっと出来ると信じて来た。
 
 なぜなら、こっちは生身の人間なんだから。
 空き家と死骸に関心や感心はあっても、感動はない。
 あと一ト月、と時間の流れが大きなファクターとなる今から、その意味は深く人々の胸に届くはずである。
 空き家や死骸……
 彼らの時間はすでに止まっている。

 こちらの時間だけが確実に動いている。
 歴然たる違いである……

時代はライブだよ、諸君。
 ラスベガス行って、ますます確信を深めたね。
 万博の大半の出し物は、時代遅れも甚だしいって。
 
 
 
 
 



劇場漬け(2005.08.24)

 先週からずっと劇場の客席にいる。
 ラスベガスも東京も、こうなるとあまり変わりがない。座って暗転を待って、舞台を観て、休憩でトイレ行って、また座って、拍手して帰るみたいな……
 ベガス方面に休憩演目はなかったけど……
 
 今日は演舞場へ。
 「もとの黙阿弥」
 六角がいて、大門さんがいて、筒井クンがいて、横山めぐみがいて、ピーターさんとか高畑さんもいて。
 まったく仲間の公演みたい。
 個人的には、六角が演舞場の舞台で、何かやってるだけで、可笑しくて仕方なかった。
 他のお客さんがあんまり笑ってないとこで、一人で笑ってしまった。
 何かやってるそのことの中身は、本当に面白いかどうかよく分かんないんだけど、六角が何かやってること、それ自体が可笑しい。
 分かるかな?
 分かんないかもな。
 そんなこと思うの、オレだけかもしんない。

 でも、あの六角が、あの新橋演舞場で一人部屋貰って、何かやってるんだからね。
 18の時、日芸の演劇科落ちて、善人会議でも、何言ってるかゼンゼン分かんない顔だけ面白い役者とか言われていたヤツが。
 顔だけでなく、井上ひさし先生のセリフを頂いてね。

 まあ、一人部屋の方は、楽屋にいるうちに、突然スルスルとフスマが開いて、隣から大門さんが「どーも」と出現し、完全な個室ではなく、間仕切り部屋であることが発覚したが……
 
 明日も劇場。
 井ノ原、長野コンビの「プロデューサーズ」
 でも台風直撃の予感。
 たどり着けるだろうか。
 
 3日連続、大劇場でござる。
 普通にチケット買って観たら、4万ぐらいになる計算で、とても贅沢なことなのだけどね。
 
 ジャギステが観たい……
 ジャギステ、の指ポキが。
 
 



眠い……(2005.08.23)

 いろいろ溜まった仕事があって、今から一気に取りかかり、一つ一つやっつけていかなくてはならない。
 楽しい夢から覚めて観る、恐ろしき現実。
 でも眠い。
 時差ぼけが続く。
 
 しかしぼんやりしている場合じゃなくて、とりあえず溜まった資料を読んだり、考えたり。
 『アトムへの伝言』もやらなくちゃ。何となく、ぼんやりとした構想はあるけど、私自身まだどんな芝居になるのか、よく分かっていない。まあ、いつものことだけど。
 
 そんな中、今日は観劇。
 ル・テアトル銀座で、山田まりやの出てる『赤い夕陽のサイゴンホテル』ってやつ。
 藤山直美さんの主演舞台。
 独壇場でありましたな。藤山さんの。その一挙手一投足に客席も沸くけど、共演者も笑わされる。
 共演者をわらかすなんて反則だけど、それはお父様の藤山寛美さん譲りの家の芸でもある。
 先日、軽井沢で見せて貰った、猿之助、寛美競演お宝ビデオの中でも、寛美さんは猿之助を舞台上で笑わしていた。
 日常でも滅多に笑わない猿之助が舞台で吹いてる姿は、見物であった。
 スゴイ芸だ。それが直美さんに踏襲されている。
 そんな中で、我らがまりやは、いつも通り生真面目に舞台女優修行を。ちょっと真面目すぎるかな、とも思うけど、まあ直美さんと同じ舞台で、何かを学ぶには、それぐらいの方がいいかもしれない。余計なことしないで、ひたすら舞台をリスペクトして、与えられた役を表現しようとしている姿は好感が持てる。
 あと、今日の彼女はとても健康そうで奇麗だった。これが何より。

 劇場で、カヤノに会う。
 大人げない衣裳に拍車がかかっていた。
 
 明日も観劇。
 演舞場へ。
 八月なのに、関係者があちこちでいろんなことしてるから、それ観て回るだけでタイヘン。
 
 
 
 



帰宅(2005.08.21)

 ラスベガスから帰った。
 前回行ったときにはなかったショウを中心に、サーカス三昧。二度見も含めて五日間の滞在で、五本を見る。
 うち一日は観光でグランドキャニオンへ。
 
 合間にバクチもやった。けど、今回は妻同伴だったので、かなりおとなしめに。
 10万円使って、だいたい10万円戻ってきた、って感じ。ほとんど負け続けだったけど、最後の日にルーレットとスロットが小当たりして五万づつ取り戻してくれた。
 んでもうこの戻り分はなかったことにして、最後の最後に全額を何かにぶち込んでBMWをお持ち帰りコースの大勝負に出ようと思ったのだけど、最後の最後はショウのハシゴもあったりして、疲れて一端部屋に戻ってしまった。で、帰り支度とかしている間にタイミングを逃す。

 もちろん、賭場は二十四時間やってるので、そこから一人で抜け出して夜明けまでやる、という方法もなくはなかったけど、寝てる妻を残して、こっそり賭場に下り、十万をスッテ帰る勇気は私にはなかった。
 しかしここで、妻の寝ている間にこっそり百万稼いで朝帰りする、というイメージが持てないことが、そもそも私の限界であろう。
 そんなイメージがなかった訳でもないが、到着してすぐの最初の1万円の小手試しで吹き飛んだ。
 だって勝てないんだもん。

 特にスロットは難しい。
 しかも北斗なんかに比べて、ナーンの工夫もないからつまんない。
 馬鹿みたく単純明快。ボタン押して、グルグルを見て。またボタン押すだけだもの。そんでアッサリとお金が呑まれて行く。
 はつきりいって面白みには著しく欠ける、ホントにシンプル
ぅなバクチである。
 特に北斗病の私には、スロットはイマイチ熱くなれなかった。その代わり今回はルーレットが面白かった。
 これも他の人々に比べたら、子供の遊びみたいなセコい賭け方なんだけどね。
 隣の席に着いた、三十ぐらいの若奥さんが、0と00にだけ、交互にチップでなく、いきなりお札で百ドルづつ、10回ほど賭けて、結局1回も当たらずに、千ドル分をあっさりスッてサアッと帰って行ったけど、
 あの賭けに、どんな喜びがあるのだろうと、一万円分のチップを愛おしみつつ、ミニマムの10ドル分づつ賭けている、セコい四十三歳は、驚きと尊敬で見とれておりました。
 
 それはともかく、ショウである。「ル・レブ」「O」「ズーマニティ」「KA」を見た。それぞれに傑作。
 まあ、その中身についてはおいおい記して行くが、一度見てあまりにスゴイので、行ってから改めて券を取り、二度見たのはカーである。
 細かく書いてたらキリがないから、思いっきり一言で言うと、「マトリックス」のスゲエ映像が、完全にライブ化されて目の前で展開されている。
 物語の世界は、古代のイメージで神話的な深みのあるものなんだけど、見せ場は、主人公チームと敵チームのハイパーバトルで、これが生身の人間によって生3Dになっている、のである。 自分で書いてもナンのこっちゃ分からないから、読んでもますますわからんだろうが、あれを言葉にするのはとても難しい。
 まあ、機会があったら、是非、見てくれとしか言いようがない。

 万博で「トヨタ館」のサーカスが話題になってるが、トヨタのロボットは別にして、見せ物自体は、KAの触り程度、って感じだな。
 劇場で上演されている言葉のない肉体演劇なんだけど、その1時間四十分ほど、劇場から重力というものが消えている、と思えてくる。
 私はよく演劇というものは、時間と重力との闘い、だと言ってるんだけど、KAについては、その重力を克服したというか、超越してしまった感がある。
 ようするに、スッゲエ。
 
 ただし、個人的に言えば前回の時にカヤノたちと二度観た「O」の方が私は好き。
 美しく哀しげな詩情に溢れている。
 サーカスなのに観ていて、哀しい、その感覚は今も健在だった。
 KAには、そういう憂いはない。明解な力強いメッセージはあるけどね。
 内容はKAの方がずっと明解なストーリーを持っていて演劇的なんだけど、Oの方が多彩なイメージと感情に溢れていて、背後に豊穣な言葉の存在を感じさせてくれる、と私は思う。
 あと「O」にはお客がついてる、って気がしたナ。
 お客さんがそれぞれに好きな場面を待っていて、そこが来ると大拍手を送ってる、みたいな。
 そんな意味で前回よりも舞台が成熟している、と思った。
 実際、盛り上がってたし。

 KAはまだそこまで浸透してない感じ。私もそうだったけど、客席の大半がひたすら驚いて、呆れてる、って感じだった。
 にしても、今回観たどれもに言えることだけど、それぞれ演者がブライドを持ってやっていて、舞台の上で確かな高揚感を味わっている様子が見事であった。
 だからカーテンコールが清々しい。気持ちよく拍手が送られ、気持ちよく受け取られている。

 言ってしまえば、観光地の見せ物なのである。
 ブロードウェイでもウエストエンドでもない。
 でも、俺たちのやってるショウは、ちょっと違うモンね、って出演者が感じてる。
 実際、単なる観光客たちが、感動しちゃってるからね。
 ある意味、一番難しい観客たちなのだ。
 アートとか、パフォーマンスとか、必ずしも興味ある人たちばかりが集まってる訳ではないし。
 そんな客相手に、どうだ、観たか!と言える。
 これはたいしたもんだな。
 
 向こうでは、国文祭プロデューサーの菊地さんとも数日一緒だった。
 建築ショウを発展させて、いつか「O」のようなものにするのが我々の野望なのである。
 しかし今回はそんな野望を内に秘めつつ、互いに家族同伴のブライベート旅行ではあったが。
 「ル・レブ」と「KA」の夜、同じステージを観た後に、一緒に遅い夕食を。
 菊地さんが、ホテルの日本人従業員から聞き出した、彼らの行きつけの日本食堂に行って。
 観光客にお勧めの店ではなく、君らが行くのはどこなんだ?というのがミソ。
 結果、中心街から少し離れたところの居酒屋に。
 これがナンチュウか、店構えもメニューも味も、見事な居酒屋で、小上がりに座り、チューハイで乾杯して、いかげそ天だの、煮込みだの食って、観てきた舞台の話しをしていると、そこがとてもプレスリーのラスベガスだなんて思えず、下北か錦糸町にいるような気がした。
 スッゲエ美味い訳でもないけど、普通に美味くて、のんびり出来る。
 結局二日続きで、そこに行って、同じような居酒屋メシを食った。
 その名も「首席」。
 思えば意味不明な店名ではある。
 あちらでは有名なんだろうか?
 確かに毎晩、日本人で一杯だったが。
 
 追記。
 ついにロストバゲージを体験。
 シアトルからの乗り継ぎのところで消えた。
 二日目の夜になって発見され、無事に届いたが……

 国内乗り継ぎ便がアラスカ航空ってやつで、尾翼に思いっきりエスキモーというかイヌイットの髭モジャラのおじさんの顔が描かれていた。
 それがどう見ても飛行機のデザインとしては首をかしげたくなるようなヤツで、エスキモー航空じゃん、と面白がっていたのだが、面白がってる場合ではなかった。
 その日のうちにみつかりますよ、と旅行会社の人が言ってたのに、なかなか出てこなくて、少しヤバイ気配にもなった。
 着替えが全部入ってるから、困ったし。
 しかし、これもエスキモー系の神様のお告げであろう、人生万事塞翁が馬じゃ、と私は思ったのである。で、一勝負やって3千ドルぐらいさっと稼ぎ、ホテルの中にあったディオールとかで、パンツから上着まで全部揃えてやろーじゃねえか、と目論んだのである。
 もちろん、かすりもせずにそのプランは破綻し、その後、バッグがポロっと出てきた。
 思えば、これもセコイ、ロストバッゲージだった……
 
 
 
 
 



大戦(2005.08.14)

 サクラ大戦へ。
 若井田エアリアルチームとか、嘉島クンとか、扉座研2とか、もちろんガンやルオやケンタとか、あまりに関係者が多すぎで、他人の公演には見えない舞台。
 にしても、扉座の人々、大人気なのね。一人一人、かけ声を頂いたりして。
 素晴らしいお客様たち。是非、扉座公演にも来て頂きたいものである。
 今回の大戦で、私は初めて、サクラ大戦という物語の世界を把握した。何で歌劇団が、帝都を守ってるのか……もしくは、何で帝都を守る人たちが、演劇なんかやってるのか、原作をまともに読んでもいないし、ゲームもやらない私にはまったく謎だったのである。
 それが今回の舞台で、腑に落ちた。少し長いけど、そう言う意味で見応えがあったな……
 サクラ大戦とかれこれ五年ぐらいは付き合っていながら、あんた遅すぎるって叱られそうだが。
 基本的に世界知らないけど、ディテールだけ知ってるみたいなのが、マイブームかもね。
 北斗の拳もまったくそうだもんね。基本世界はナーンも分かってないけど、剛掌波はヤバイってことだけは、知識を越えて、身にしみて知っているオレなのだ。
 今、コンビニで北斗の拳が売られてるんだよな。第一巻からね。よっぽど買って読もうかと思ってもみるんだけど、なんちゅうか、知らないけど、想像で補ってるみたいなのも、良いかなと思うんだよね。
 今日みたいに、ある時、そういうタイミングが来て、霧が晴れるように、謎が解けて腑に落ちる、っていうの。
 ともあれ、盛り上がってて、楽しい初日であった。

 さて、ここで告白。
 実は私、来週ラスベガスに行きます。亀有のパチスロ・ラスベガスではありませぬ。ネバダ州のペガスです。
 東京のパチスロではついに飽き足らなくなりました。お店のコインじゃなく、本物の銭をマシンにぶっ込む感覚が味わいたくなりました。
 劇団の金、ごそっと抜いて、勝負に行くつもりです。
 資金切れ赤字解散か、一撃数千万円ゲット、資本倍増。有限から株式へのステップアップか。
 命運を賭けた勝負をしてきます。
 んで、その合間に、『O』に続く、超絶アートサーカス『KA』とか、アートサーカス・エロチックショウ『ズーマニティ』とかを見てくる予定です。
 でも今回は、あくまでも博打の旅です。サーカス見物は、博打の合間のほんの息抜きです。
 公演資金倍増はムリでも、狭い事務所の引っ越し資金ぐらいはカッパイで来ます。
 待ってろよ、ベガス。なのであります。
 
 そいえば、前回、初めてベガスに行った時は、茅野や広井さんと一緒でした。
 そんで『O』を見て、そういうのがやりたくなり、建築ショウに発展することになったのでした。
 そこからはじまり、若井田さんと知り合い、その若井田さんが今回の大戦ではスタッフとして参加している訳で、ご縁というものはこうして広がってゆくものなのだなあ、としみじみ思いました。
 
 ベガスの闘いの結果をどうぞお楽しみに!
 
 



ティアラ江東(2005.08.13)

 山口景子の芝居を観に、住吉という場所まで。こんなとこに本当に劇場があるのかと不安になるような場所だったが、確かにあった。しかもピカピカ!
 ピーター・シェーファーの作品。『エクウス』とか『アマデウス』で有名な作家だ。
 ベテラン俳優二人と、景子の3人芝居。初外部作品らしいが、スッゲエ渋いチョイスである。
 注文付ければキリがないけど、こんな場で臆せず堂々とやっている。それだけでも今回は、よくやったと言えるだろう。
 にしても、週三回違う男と寝るようなアバズレ娘の役である。景子のニンにない役柄だ。(本当の景子がどうかはよく知らぬが……)
 それを優等生の景子らしく、生真面目にやってる訳だが、生真面目さが見えてしまうところが弱点だな。
 役を演じるのに、真面目にやるのは当然だけど、それで真面目さが見えてしまうのは、まだ若さ。未熟さというものだろう。
 真面目に不真面目をやるってことも芝居にはあるからね。
 お前、本当に週三、別男とセックスやったことあんだろ、と今日来ていた、わし、田中、犬飼のワークショップ黄金トリオ全員に言わせしめるような演技を見せなくては……
 まあ、あと三回。その間に何か掴むモノがあるように、取り組んで欲しい。
 終演後、黄金トリオで景子さんを囲む宴席。
 店の終わりで外に出たら、スコールみたいなドシャブリだった。
 4人で必死に錦糸町まで移動。
 何か不思議な劇団仲間の夜ではあった。
 
 まったく違う話だが、愛知県館の地球タイヘン大講演会の定点観測っていうブログがあんだが、その中の昨日付けの博士の日記に私へのプレゼントが貼り付けてあった。
 誰が作ったか知らないけど、スッゲエ面白い見せ物が見られた。
 DJラオウ放送だって。
 まさに私がこの数ヶ月、思い続けたことが、見事にカタチになっている!
 北斗に関心のある人は、是非行くと良い。
 うちのリンクから、定点観測に飛んでみてくれ。


 
 
 
  
 



あづい(2005.08.10)

 ムシムシと暑い。
 当然の事ながらクーラーつけっぱで、それは妙に寒い。
 難しい。

 政治が急変。このクソ暑い中、選挙か。ますます暑苦しくなること確実で迷惑なことである。

 にしても、思う。小泉純一郎という人はつくづく博打打ちである。
 そんで強い。

 政治的な思想とか何とかは別にして、心底感心する。
 じいさんか何かが本物の侠客か何かなんだよな、確か。
 政治家の血筋ってより、バクチ打ちの血で成功して来た人なんじゃないだろうか……
 
 あれだけヤバそうだったイラク派兵でも、未だに自衛隊で一人も死んでいないし、そもそも派兵決定するやいなやバグダッド陥落であった。
 これは読みと言うよりも、バクチにおける引きの強さである。

 思いっきりがいいのだ。賭けると決めた時にはドーンと賭ける。勝負の時は勝負と決めてオールオアナッシングで全つっぱである。
 んで今回の勝負がこれまた、見事に強気で、捨て身だ。

 なかなかこうは出来ないよ。私自身小バクチ打ちだからよく分かる。
 たいていは迷いが出るし、全つっぱ、なんてそう簡単に出来るもんじゃない。
 しかもジャストのタイミングで。
 我々もよく全つっぱはやるけど、十中八九はタイミングが外れていて、ボロ負けにしか向かわない。
 全つっぱで勝てるなんて、バクチの神としか言いようがない。
 
 しかし、それはつまり、我々国民はたまたま当たってきた彼のバクチに付き合わされて来ていて、たまたまたいしたドボンがなくて無一文になっていないというだけだとも言えるのである。
 だから、そろそろ、この悪運も尽きる頃だろうという読みもあるし、そろそろ鞍替えを考えても不思議ではない。
 何しろ今度もやけくその極みのようなバクチである。
 ますますヤバイ全つっぱだ。今まで浮いた分、全部つぎ込んで、それで無一文になっても構わないという勢いである。
 
 さて、それに乗るのか、乗らぬのか。

 再度断っておくが、これは政策とか思想とか、そういうのは全く抜きにして、ただバクチとしての話である。

 そう考えて、再度、賭場を見渡すと、たとえば綿貫会長とか亀井親分。手強い侠客ではあるはずだが、いかにもタネ銭が乏しい感じになってきた。
 バクチは、気持ちと資金にゆとりのある方が圧倒的に有利である。
 今の時期、小泉に刃向かったというだけで、タネ銭の尽きた気配がある。あとは借金勝負だろうが、この世の中、借りた金で勝てるバクチはないのが常識。どうみても勝ち目は薄い。

 ならば、岡田クンか……
 が、この人、毎日テレビで見て、話しを聞いているが、何というか、当たりそうな気配がしないのは私だけか。
 当たっても、最初の攻撃でラオウの燃えるみかん食らって、1回で倒れて、二度と立たないというか……

 真面目で、誠実にやりそうに見えるけど、これはあくまでバクチの話しである。
 当たりを引いてくれるチカラがありそうかなさそうか、って話だ。

 たとえば、競馬場で、二人の予想屋がいます。
 小泉と岡田と。
 金出して、一点の予想を買うとして、どっちを買う?
 岡田屋は真面目に深く分析とかしてそうなんだけどな。でも、それで当たるかと言えば、そう簡単にいかないのがバクチだからねえ。
 
 岡田屋は、いわゆる引きが弱そうに見えて仕方ない。
 レース終わった後の惨敗の分析まで、誠実にやってくれる気配はあるけど、そんなのいいから当たりを引いてくれ、って感じ。
 二人が、ルーレットとかやってたら、わしはやっぱり小泉と同じとこにコイン置きたくなるなあ……
 えっ、こんなとこ、来るのかよ、みたいなところに置いて、それでもウッソー、みたく当たる絵が、想像出来るんだよな。
 
 もちろん、そんな天才も、ある時突然、サイコロの女神のご機嫌を損ねて、地獄に堕ちることもあるのが、博打打ちの宿命であるから。数日後、彼が無一文で路傍に震えていることは大いにあり得るのであるが……(この辺の思想は拙著「愛しの儚」参照されたし) 
 
 天下の一大事に際して、極めて不謹慎な態度ではあるが、小泉はスゲエ博打打ちだなあ、と前々から思っていたので、書き記しておいた。
 ついでに、小バクチがしたくなった……



ドラマの夏の日(2005.08.07)

 歯を入れて、大和に。
 歯は何にも言わなかったら、何千円のヤツが出来ていた。良いお医者さんかもな。一滴も痛くなかったし。でもとりあえず昨日で終わり。

 さて大和。暑い日だった。途中相模大野で、江ノ島線に乗り換えるんだけど、そのまま江ノ島に行くべきだと、遺伝子は叫んでいた。
 が、本能の呼び声を聞いてはイカン時があるのだ。
 意を決して桜ヶ丘に。
 急行の止まらぬ地方都市の駅前のアスファルトはどこまでも暑い。
 横断歩道が陽炎で揺れていた……
 と、文学的に暑い。

 かつて岡本(元岡森)と塾の先生をやっていた桜ヶ丘だ。
 善人会議にまだ成る前、その塾の教室を借りて稽古したこともある。
 今やそんなことを知るのも、六角と杉山だけだが。
 昨日はその塾とは反対の方向だった。
 大和の公民館みたいなとこ。犬飼日記にもあったように、そこに老若男女約三十人弱でこれから1年、芝居創りの体験をしようという企画なのである。
 参加者はなかなか熱心でよろしい。でも、公民館の窓から外を見て、この空の先に、江ノ島があるのだなあ、とふと思った。
 芝居なんかやる季節じゃない。
 みんなは一所懸命やってたけど……

 終えて、新宿に。
 夕方だった。
 街に戻ると、また別の遺伝子が私を呼ぶ……

 まあ、暑気払いってヤツですかね……
 誰が聞いてる訳でもないのに、何か一人で呟いて、池袋のホームグラウンドへ。
 凄6の日だ。

 ここで事件。
 空いてる席に座ったのだ。二千発出てるけど、今、ちょっとハマリ気味の台。
 しかし、これが出る予兆まったくなく、当分は停滞のモードに思えた。
 どうしようかな……と思うところに、二箱出していた隣のオジサンが辞める気配。こちらも少しハマリモードか。でも、私の台より、明らかにチェリーやスイカが落ちている。オジサンも未練はありそうだが、奥さんらしき人に突っつかれている。

 私はこういうドラマに弱いのである。

 オジサンは帰りたくないのだ。でも奥さんには逆らえない。この後で、ジャンジャン出たら、死ぬほど悔しい。んが、お前、先に帰ってろ!なんて豪傑みたいな事はとても言えない、小市民のオジサン……
 ここで終わるしかないのだ……まだまだ出そうなのに。
 明らかにオジサンの顔には、葛藤の色が読めて取れたのである。
 オジサンの未練は、コインの涙となって、このあとボロボロとこぼれ落ちてくる。
 悪いが、小市民のオジサンに泣いて貰おう。
 私の中で、ストーリーは出来上がった。
 
 私は台を移った。
 隣である。
 そして新たな投資を開始した……
 一方、私がどいた後の席にも客は付いた。
 こっちが出たら嫌だな……
 というのは、いつも思うことではある。
 でも今日の私にはドラマがある!折しも、ドラマの授業を江ノ島の手前まで行ってやってきたところだぜ。
 ドラマがある以上、私は負けない。
 
 んが、
 んが、
 んが。

 もうお分かりであろう。
 さよう、私がどいたその台が、何の予兆もなく、突然、大当たりを出したのである。
 しかも、北斗絵柄とレインボーオーラの組み合わせ演出だ。
 これは、全大当たりの中で、最強の状況を示すものとして、北斗ファンの間では、永遠の憧れとして語られている当たり方なのである。
 普通は、7の字が揃い、白や青のオーラにケンシロウが包まれる。
 ドラマに裏切られた……
 桜ヶ丘なんか行かず、江ノ島へ行きたいなんて思った罰か。 

 心臓がバクバクした。
 正直に言おう。
 1回でケンシロウが死んでくれ、と心で願った。
 たとえ北斗レインボーでも、引きが弱ければ、1回でケンシロウは死ぬ。それが北斗だ。
 人の不幸なんか願ってはイカンのだけど、そんなものを見てオメデトウなんていう器量はとても私にはない。
 がんばれ、ラオウ!
 そのケンシロウを倒してくれ!だ。

 もちろん、顔には出さないし、隣をじっと見たりもしない。あくまでも平静を装い、チラ見である。
 たぶん前から見たら、私の顔はかなり変なことになってたのではなかろうか。
 半分は白目になっていたはずだ。
 当然のこと、自分の台なんか上の空である。
 ひたすら、隣の展開を眺めている。
 
 でも、さすが伝説の北斗レインボーは強かった。
 何度も燃えるミカンをラオウは投げつけるのに、かわしたり、立ち上がったり。
 やがて……

 私が捨てたケンシロウは、愛を取り戻した。

 愛で空が落ちてくる、だ。
 ユアシャ!!!!

 ここに至って、私の心は折れた。
 はっきりと音が聞こえた。

 うわああああ……

 声には出さぬが、そんな感じで、私後先考えずに台を離れ、そのまま店をも飛び出した。
 私が捨てたケンシロウが大活躍する、その勇姿を、最後まで見届ける心の強さは私にはなかった。
 私は小さい、小さい人間だ……
 
 店を出ると、まだ暑い池袋の街。
 太陽が眩しい。
 そういって人を殺した若者がいたっけ。
 もはや太陽は沈み、夜だったけど、そこには人を狂わす太陽が見えた気がした。
 その刹那、ドラマにも、悲劇というものがあることを、私は思い出していた。

 町を追い出されたオイディプスの気分で、雑踏の中を大勢の群衆たちに小突かれながら流離い、冷たいラーメンを啜って、重い足を引きづり家路についたのであった。

 明日、海を見に行こう、と思った。


 



 
 もちろん思っただけで、行ってないけど。  
 
  
 
 



2、3日のこと(2005.08.06)

 一昨日からはじめる。
 神楽坂で、ものすごく美味しいフランス料理をご馳走になった。名前は何度も聞いたけど、覚えられない。
 今度フランス料理の本を出す、神山典士氏にお誘いを受けて。天才ピアニスト少年・辻井クンとの出会いから、一気に社交界への扉が開いているのである。
 フォアグラ、トリュフ、キャビア、全部本物を頂く。聞けば、鉄人を倒したシェフだとか。
 そういう豪華品を、近年、こんなにたくさん量を食ったのは久しぶりだぜ、ってほど、多量に食べた。
 ご馳走で、腹一杯じゃ。
 最後のメインが『仔鳩とフォラグラをどうしてこうしてパイ包み』なんてヤツだったのだが、そこに辿り着いた時点で、いろんなものを食べててはや満腹。この上に、鳩と肝なんかどこに入るというのですか、なんて思ったけど、一口食べたらウメエ、と呻き。気が付いたら、全部食べてた……
 神山氏のほかに、音楽界、出版界、社交界……各界セレブの方々とともに。
 素晴らしき贅沢ナイト。

 翌日は、まだ満腹なお腹を抱えて、書き仕事。

 んで今日は飯田橋で、取材。厚木の公演のことと、高校演劇について。
 取材を終えて、一旦事務所に帰ったら、事務所の入ってるマンションの一室が売り出し中だった。
 オヤジもそれを見て、ちょっと内見してみるか、と。
 今の事務所はモノで溢れかえっていて、私の机なんかとっくになくなって居場所はないし、五人以上の打ち合わせをするスペースもないのである。
 ホントに狭くなってきた。
 移ろうかという話は最近チラホラ出てはいるのだ。
 んで問題のお部屋は、古い物件なんだけど、リフォームしてあって、中はピカピカ。元祖買い物大好きオヤジの血が騒ぐらしく、いきなり買うか、なんて言い出す。
 まあ、賃貸家賃払い続けることを考えれば、買うのも大差はないのであるが……
 にしても、買い物煩悩スイッチ入るの、はやいなあ。
 三十分後には、銀行と話してみようか、というところまで進んでいた。
 その後、事務所を出たからどうなったかは分からぬが、明日辺り、もう買ってしまってるかもしれない。
 となれば当然、次は中に入れるアレコレを買うことになる。
 そうなればおそらく、買い物二号、三号の、カヤノ、赤星らも黙ってはおねまい、きっと競い合って、いろいろ買い出す。
 少し、というか、かなり不安だ……
 妙なことにならなけゃいいが。
 
 さて私は事務所を出て、博多から来た若いお嬢さんと待ち合わせに。
 高校生ダンサーの杉山さくらさま。
 博多のイベントで、活躍した子が、某ミュージカルのレッスンのために東京に来ていた。
 たいしたもんだね、高校生で、一人で東京まで来て、合宿レッスン受けてるんだもの。
 きっと大物になる。 
 せっかくだから、博多関係者何人かでメシをと思ったけど、今はそれぞれの活動に忙しい時期で、結局、飯田橋で二人でご飯。
 相手は高校2年生だよ。
 父と娘である。
 でなければ、犯罪コースか。
 しかし、ケツコウ会話ははずむ。オレは偉い、高校生とも楽しく過ごせると改めて、自分を誉める。
 本当は、さくらが合わせてくれていただけかもしれぬが。
 
 さくらに、うちの掲示板に、今日、横内さんにご馳走になりました、ハート、って書き込めと言っておいたのだが。
 ないね。
 高校生相手に、あんま、変なことさせてはいけません。
 もちろん私も大人ですから、八時には、ちゃんとお帰ししました。

 明日は、欠けた歯を入れて、その後、大和へ。
 田中クン率いる扉座エデュケーション部は神奈川の大和でも、演劇教室をはじめているのである。
 ちなみに私の実家は大和市の中央林間に今もある。
 ある意味、里帰りだ。
 
 歯医者の件だが、結局、最も近くのドアを開けた。
 モデルのような歯科助手はいなかった。とは言え、おばさんでもなく、微妙なライン。
 ただ、恐るべき事実が判明。
 欠けたのはセラミックではないというのだ。もっと安物の合成樹脂だと。
 セラミックだと思い込んでいたのだが……
 そう言えば、何本か入れるのに、全セラでは高すぎるから、目立たぬところは、安物で手をうったような気もするし……
 この辺り、記憶が定かでないから、何とも言えぬが、くだんのモデル囲い医者を、正直半分私は疑っている。
 
 
 



8月・懺悔の告白(2005.08.02)

 実は細々とだが、パチスロを続けているのである。イチイチ報告はしなくなっただけだ。
 今日も、買い物の用事のついでに、チョロッとやった。相変わらず北斗だ。
 実は、報告もないままに、連戦連敗状態だった。あまりに負け続けなので、密かに自分をゴールデンイーグルスと呼んでいた。
日本一、パチスロの下手な男とも蔑んでいた。
 今年の初め辺りは、パチスロの天才だと豪語していたものだが、心の底から恥ずかしい状態だった。

 とは言え、それでもたまに勝ったりして、例のスロ貯メも、すでに一万枚を越えているのである。正直言って、かなりやってる証であろう。こんだけ負けてて、それでもそんだけ貯めたんだから。投資はいったいいくらになっているのか。
 考えたら怖くなるから、それはもう考えない。
 ただ、今日、そんなことを告白したくなったのは、久しぶりに、愛を取り戻した からである。
 今日は1時間半ほどしかやらなかったのだけど、一撃千五百枚っていう大ヒットがあった。10連を越えて、愛を取り戻せ が聞こえて来たのである。約二月ぶりのことだと思う。
 嬉しくて、小さくガッツポーズ。その後に一緒に歌った。
 ユアシャ、愛で空が落ちてくるぅ……だ。
 空が落ちてくんだよ、スゴイだろ。
 ただ今日もラオウ昇天には至らなかったが……
 
 で今日の本題はこのラオウ昇天である。
 愛知博のタイヘン大講演会場で、七夕のお飾りをやったそうなんである。すでに先月のことだ。
 そこに、私の名で「ラオウ昇天!」という願い事の短冊が飾ってあったのだそうな。
 私はその時には行ってないので、誰かがそれを書いてくれたのだ。頼んだわけでもない。心からの親切だ。
 先日、行った時に、ある人が証拠写真を見せつつ教えてくれた。
 ありがとう、そんなに気にかけてくれて。がんばりますよ、昇天まで!
 とその場では言ったのである。
 が、実は密かに心が痛かった。
 というのも、実を申せば、私、1回ラオウを昇天させていたのである!皆にはそれを黙っていた……
 おそらくあれは、6月のことだった……
 何かたまたま座った台が、絶好調で、何回か小連続があった後に、いきなりするすると20連を越えたのである。
 隣のおじさんが、やったね、昇天だ。と喜んでくれた。
 初めてスよう。もう、これでラオウにはゼッタイに負けないんですよね。
 そうだよ、ラオウ昇天まで、出続けるんだよ!
 
 面白い設定なのである。
 それまではひたすらラオウに倒されないことを祈り続ける。でも20連を越えた途端、今度は、ラオウが死なないことを祈り続ける。ラオウと戦い続ける限り、メダルが噴き出し続けるのである。
 ラオウよ、立ち続けて、ケンに襲いかかって来てくれ!
 んが、なんたることか。そんな会話を交わした途端に、ケンシロウが、次が最後の攻撃だ、とか宣言しはじめて、その時を迎えてしまったのである。
 まったく必要のない時に、突然、強くなるへそ曲がりだ。
 で運命の一撃がラオウの腹に突き刺さり、ラオウは一点の悔いもなし!とか叫んで、天に還った。
 昇天コースの最短コース21連終わりだ。
 ともあれ私は、ラオウを昇天させたのである。
 私の頭上にも「ラオウが天に召された台。まだまだ還り足りぬ!」というスペシャルの札も刺さった。
  
 もちろんそれでもめでたいことに変わりなく、現在、一万枚の大台に到達しているのは、この日の大爆発のお陰である。
 ただ、それを報告することが出来なかった。
 と言うのも、詳細は忘れたけど、たぶん私はその日、パチスロ屋になんかいるはずのないことになっていた日なのである。
 誰に対して、ヤバかったのは、もはやまったく不明だけど、とにかく、こんなとこに公式記録として残す訳にはいかなかったのだ。
 で、その初体験は、私の心の奥にひっそりと仕舞い込まれたのである。
 実は、いろんな人に会うたびに、ラオウ昇天は?とか聞かれることもあったのだ。その度に、いやいや難しいです……
 なんて答えていた。
 本当にごめんなさい。
 
 いつ告白して懺悔しようかと、ずっと悩んでいた。今日、久しぶりに、愛を取り戻して その勇気を得た。
 七夕に書いてくれた人もごめんなさい。

 しかし、昇天はその一度キリである。 
 その後の不調はたぶん、この嘘の罰だ。
 これで、今月からツキが変わる。
 
 





build by HLimgdiary Ver.1.23