作家生活(2005.04.30)
そろそろ作家に戻って働く時が近づいてきた。 昨年の秋から、今年の春までは、イベント屋だったからな。しかしついにパソコンの前に座り続ける時だ。 と言っても、まだ扉座の新作『おばQニューヨークへ行く』に取りかかる訳ではない。 それはまだ当分先のことだ。でもタイトルが決まってるだけで一安心だね。どんな芝居なのか、ゼンゼン知らないけど、確かにやるんだな、単なるオバQじゃなさそうだし、また何か仕掛けがあんだろうな、オバQは三千代かな、やっぱ六角かな。岡森はジャイアンが一番いいけど、オバQに出たら変だよな、とか、想像も膨らむ。 私はケッコウ気に入ってる。 それはともかく、書きの季節だ。 でもたぶん始まったら、また辛いとか、お外に出たいとか、文句ばっか言い出すね。 しかも次の仕事は長くかかる。 今日はそのための取材で、とある若い女の子と、喫茶店でずっとお話し。その後、パソコンに向かって、ホン書きの設計図作り。 夏のような暖かい日であった。
次なる芸当へ(2005.04.29)
無事に千秋楽を迎えた。 前日は、NHKで収録。派手で軽いノリの芝居を創る いのうえひでのり さんは、生真面目に芝居を語り、重厚な演技の吉田鋼太郎さんが軽妙に笑かしてくれる。 作品と人柄は別物ですねえ。どちらも楽しかった。 そして千秋楽に向けて演劇関係者がドンドンやってきた。前夜は、大谷亮介氏や京晋介氏も来てくれた。あと三木さつきもいて、久々に話した。 演劇人の溜まり場酒場で、芝居の話しをアレコレ。とても演劇チックであったな。 千秋楽の夜は、私は厚木で文化会館の理事としての会議があり、開演に間に合わず、途中から観劇。 お客さんが盛り上げてくれてたのが嬉しい。満員には届かなかったけど、決して寂しい舞台じゃなかった。さまざま課題は残ったけど、未来につながるモノだった。 モボ君には、是非、もう一度、新作書き下ろしをお願いしたいね。今後、たくさん仕事があるみたいだけど、がんばって、どれもビシッとやり遂げて、大先生となっての凱旋公演を扉座でやって頂きたいものである。 そういう意味も含めて、打ち上げで、犬飼も出る、夏の椿組の野外劇辺りが勝負であるゾ、サッカーで言えば、アジア最終予選であるゾ、と敢えて脅しておいた。 善戦ではダメだ。鈴木君は何がなんでも結果を出さなくちゃイカン。特に、椿組の公演は、わたしらの公演以上に、雑多な演劇人が入り乱れる業界のルツボであるから、ここで勝たなきゃ、次のチャンスは潰えるのである。 せっかくの打ち上げの夜に、またそんなこと言われて、鈴木君も気が休まる暇がないだろうが、そういう大勝負の時が人間にはあるのである。 そして、そういう人と今まさに付き合っているというのは、楽しいモノだ。自分の青春もシンクロして蘇って、少し血が沸き立つ。まあ、実際は鈴木君も青春なんて歳ではないんだけどね。
午前1時に始まった打ち上げ。長い長い大入り袋配りを見届けて3時に退散。
そして今日は夜から、素晴らしい体験をした。 十七歳の盲目のピアニスト、辻井伸行君のサロンリサイタル。今年の秋、五年に一度だけワルシャワで開かれるショパンコンテストに最年少でチャレンジするという天才少年である。 作家の神山さんに誘われて、たった十数人で、その天才の演奏をレストランの個室で、間近に取り囲んで聞くという機会を得た。 はっきり言って、私はピアノ演奏の巧拙なんか、まったく分かんないけど、それがただならぬモノであることは、深く感じた。 最後のリクスエトに応えて、伸行君は、即興曲を本当に即興で弾いてくれた。 それが、そのまま芝居に使いたくなるような、優しく心地好い曲だった。 ミュージカルやろうぜ、と今のうちに固い約束。本当の話、バーンスタインみたいになっても不思議じゃないもの。
強いインスピレーションを受けた。 天才児モーツアルトの演奏を、サロンとかで聴いた人たちの受けた感銘とかに近いものがあったのではないかしら。 彼を窓口にして、少しクラッシックを勉強しようと決めた。次のコンサートはサントリーホールで、交響楽団との演奏だって。 でも指揮が見えないじゃん、て言ったら、それは息で感じるから問題ないんだってさ。
報告 キリ番ゲットは、4並びの1名様が楽日に現れて、見事新刊本をゲットなさいました。 あ、今、思い出した。私ともう一人のサイン、て言ったんだ。もう一人のサインがなかったんじゃないか。 もしかして、ゴメン。
日曜日(2005.04.25)
お昼の公演。終えてそのまま帰宅。 ビデオ鑑賞。深夜劇場へようこそ の撮りが火曜日に。ゲスト井上ひでのりさんの分の新感線公演。野獣郎をびっちし三時間。 昨夜、あずみ を観たばかりで、今夜は 野獣郎 サンプリングのビシ、ズバ、ドピュ と。逆光ビシビシ、爆発、噴射の雨あられ。 嫌いな世界じゃないし、愉快で楽しいけど、さすがに四十3の視覚聴覚には、トゥーマッチ でござります。 ああ、もっと静かな世界に浸りたいと思いました。 浅草の片隅辺りの、お客なんかいなくて、ガラガラで、のーんびりと半分眠ったような寄席の客席で観る、何が面白いのかよく分からないような紙切り芸とかさ。 つまんないのが癒しになるみたいなね。 まあ、若者には、そんな境地はまったくわからんでしょうがね。 そういうこともあんだよね。 色川武大という人も言っている。そういう芸はクセになるんだって。 無意識に入りこんで来て、変な世界に誘うみたいなね。 世の中、サービス過剰なんだよな。もちろん、わしも一方ではサービスの世界にどっぷり浸かって生きてるから、ないものねだりの憧れみたすなんでもあろうが。 でも井上さんと会うのは楽しみ。実はゆっくり話しするのは二十数年ぶりじゃないだろうか。初めて善人会議が大阪公演して、その夜、新感線のせまーい稽古場で夜通し飲んで話した以来だ。 その後、わしはいろんなことやって、時代とともに大きく変わって来たけれど、井上さんは、ずーっと一つのことやり続けて時代を変えてきた。 語り合うべきことがたくさんある。ちなみに、もう一人のゲストは、インテリ・シェイクスピア俳優・吉田綱太郎さん。
良い知らせ。 今日、猿之助さんが、ヤマトタケル の千秋楽のカーテンコールに立ったそうな。 あの人が、舞台に帰ってきた日と記憶しておこう。
金土(2005.04.23)
二日目。 お昼に来年の仕事の打ち合わせを。狂言の茂山千之丞さんらと飯田橋で。八十一歳とは思えぬ、若さに驚愕。 ゴールデンウィーク、大阪に狂言を見に行くことになる。いい機会なので勉強しようと思う。 その後、紀伊国屋で、千之丞さんの本を探して購入し、次の打ち合わせを新宿で。同じく、来年のものだけど仕事はここからかかる大きなもの。 それを終えた時にはすでに、開演時間を過ぎていたので、ちょいとラーメンを食べて、劇場に。ロビーで舞台のモニターを観ていると、そこにカリスマ・広井王子さんが来る。忙しくて、タイヘンなんだけど、差し入れだけでもとお立ち寄り。 そのまま、しばしロビーで久々の近況報告会。広井さんのことは、新刊でも触れてますからね。本も読んでてくれて、あれやこれや。 いろんな締め切りを抱えていて、そういう息抜きが欲しかったみたいだな。でも去りがたそうにしつつ仕事にお帰りに。カリスマも時間に追われている。 終演後、ライター神山氏と会談。某劇団の二十年記念誌のためのインタビューだそうな。 わしらは記念誌を自前で作ったけど、そこは出版社が作るのだ。すごいねえ、セ・リーグ・メジャー某劇団。 金曜はマキノさんが来てて、モボも交えて飲み屋に。 パンフにも書いたぱ・リーグ合併話など、ひとしきり。 とにかくたくさん話した日であった。
さて、土曜は昼間までサザンにいて、夜は抜けて、明治座に。あずみ を見に行く。銀之丞や、涼風真世さんとか、知り合いばっかの舞台。 でも、十七歳の、あずみ 黒木メイサちゃんに一番驚く。初日の日来てた近藤さんも褒めてた。北区つかこうへい劇団の新鋭らしいけど、世の中にはすごい子がいるもんだねえ。 モデルもやってるそうだが、美しく大きく、そしてパワフル。 毎日ロビーに立ってるけど、本があんまり売れない。 ここで売れなきゃ、どこでも売れないと思われ、少し焦り気味。 中身はホント良いのよ。騙されたと試しに思って買って欲しい。
初日(2005.04.22)
ロビーで乾杯して、その後、飲み屋へ。さっき帰宅。 六角とか、三千代とかも来てた。久しぶりに会う劇団員たち。 厚木よりも、よりシャープに刈り込まれていて、見やすくなった芝居。厚木よりも、明らかにノリの悪い客席も、最後にはかなり味方に引きつけていたと思う。 まずまずのすべり出しであろう。 アッという間に終わる公演だから、一致団結して、より多くのお客さんを劇場に呼び寄せて欲しい。 やっと来てくれた、モボ鈴木先生と飲み屋で、お話し。人生の大きな転機を、まさに今夜、迎えているその人と、その瞬間を過ごすのは楽しいね。 これでモボ伝記の重要な場面で登場出来るなと、皮算用である。 近藤正臣さんや佐藤治彦さんら、所縁のゲストも多数来場して、若い芝居を盛り上げて下さった。心から感謝。 お昼はヤマトタケルだった。 右近のタケルで。 一言で言えば、とても良い芝居だった。たとえ旦那が元気でも、この座組で、もう一度見たいと思うような出来だった。 タケルは若い役なんだよな。元気が有り余って、一人で何十人のクマソをバッサバッサ斬り捨てる。 走る、跳ぶ、叫ぶ。実は右近も、いい年とはいえ、まだまだ体力に余りがある。 まさにタケルが存在している。それって大事だよね。もちろん、天翔る心 は猿之助の精神なんだけど、それをきっちり継承もしているわけで、師匠の精神を宿した、新しい肉体による、タケルの再生産なのである。 ヤマトタケルは未だ新しい芝居である。 そう思わせただけで、大成功だ。 二十一世紀歌舞伎組も頼もしい。 扉座新世紀組も負けるな。
一つ大問題。 本があんまり売れない。ここで売れなきゃ、売れる場所はないので、もう少し何とかしたい。なあ、田中? 今ならもれなく、署名付いてます。
また雨だ(2005.04.21)
劇団は小屋に入っている。けれど、わたしはもう、お役ご免というか、イチイチ小うるさい舅が側にいるのも、皆さん、気詰まりであろうと思われ、新宿初日まで消えていることにした。 明日はその初日。ただし、消えておくために、というか、当然のことというか、まだ見てなかった演舞場のヤマトタケルを11時から見て、その後で新宿に行く。東京公演が間もなく終わりなのだ。 またしても猿之助のいない、おもだか一門公演。 寂しいけど、お客は一杯だそうな。素晴らしい。 扉座も、二十一世紀歌舞伎組も、いつまでもただ一人の師匠に全部を頼っていてはイカンということであろう。 まあ、わしは病で倒れてる訳ではないから、歌舞伎組とは事情が違うが、それでも新しいチカラが試されているのは同じである。 扉座の新作、芝居はカタチになってきたが、あとは公演が盛り上がるがどうか。一門の尚一層の奮闘を期待する。
今日は昼過ぎに、麻布方面で、来年にやる予定の大きな仕事の打ち合わせ。 その後、浅草に行って、大門伍朗一人芝居を見た。花見にも、牛すじ煮込みをもって駆けつけてくれた大門さん。本当なら、劇団員一同で行くべきナンだけど、公演が重なってるから、せめて私がと思い、馳せ参じる。 新宿の男娼の一人語り。 老いたオカマが、悲しみに暮れる。 大門伍朗が可笑しいのはいつもの通り。でも、今夜のは、アングラ出身の片鱗を覗かせる、一種独特の凄みと毒が満ちていた。 芝居の前に、浅草ヨシカミで、メンチカツなんぞ食べる。浅草洋食の老舗。 料理評論家絶賛の店で、わしも浅草にいて、店の前に行列がない時には、よく入るんだけど、そんなびっくりするほど旨いとは思わんのよ。でも、懐かしく正しい味だって感じがする。あまーいデミグラスソースね。 開演まで傘さして六区の辺りをブラブラと。浅草は今日も人が少なくて、半分死にかけ。しかし、わしが浅草を知ってから、ずーっとこんな感じで、でも完全にに死なないで、だらだらと半死状態を続けている。 なんだか不思議な町である。 前に買ってここで自慢した、ハードディスクウォークマン。ただいま千三百曲。んで最近のブームがシャッフル演奏。機械が勝手に、選曲して聞かせてくれる。 ボブ・ディランの後に、森田童子が来て、その後、スティングが歌って。今日の君、なかなか渋いね、と思ってたら、突然、嘉門達夫の、アホが見るブタのケツ になった。 嘉門達夫をそこに入れたのは、わしだから、文句は言えないけど、それは狙いか。しかし、その狙いは、いったいどういう意図なんだ。 機械に聞きたい。
厚木から帰りました(2005.04.18)
土曜に初日を迎えて、そのまま一泊しました。 1年半ぶりの厚木公演である。シアタープロジェクトの皆さん、ボランティアの皆さん、久しぶりでも待ちかまえていてくれて、変わらぬ情熱を注いでくださる。感謝、感謝。 良い初日であったと思う。 名古屋のステーキ・ファミレスで打ち合わせてた頃には、ホンマにこれ仕上がるんやろか、と、内心思ったものであり、まあ、一回ぐらい大失敗してみるのも、茅野にもモボ君にも良い経験となろう、などとかなり思い切った開き直りの境地に達していたものです。 それが、なかなかどうして立派な芝居になってきたものです。 その上に、私の芝居とは違う世界を持ったものだけど、扉座らしい舞台であるという、面白さがある。 芝居をたまにしか見ない厚木のお客さんでは、私の作だと思った人も多いのではなかろうか。 まあ、以前、モボの芝居を見た時、マキノさんと一緒になって「やっぱりマキノさんの弟子だね、そっくりだね」といったら、マキノさんが「いやいや、これは横内ワールドでしょう」といっていたものですが、確かにどっかでわしらは繋がりあってるんだな。 そらにさからうもの の大森君なんかは、私とは完全に別世界の人、って気がするけどね。 しかし、茅野はまだ粘って、新宿公演に向けてアレコレ手を加えているからね。 もっともっと良くなるだろう。 芝居のチカラで是非、客を呼んでほしい。 福岡の国文祭の飛梅組のメンバーだった、元高校生たちが、今は大学生になって神奈川にいて、今日の公演に来てくれた。 ガンや景子の教え子?たち。 あちこちにいろんな種を蒔いてるからな、私たち。これからどんなことが起きて、誰と会えるか、ますます楽しみ。
初日から私はロビーにたつ。 本を売らねば。
しかしそれにしても、モボである。厚木の初日に来ないとは、どういうことかね。 ま、その忙しさは、彼の日記でようく知ってるけどね。他の仕事なんかほっといて、こっちにこんかい! ほかの仕事の迷惑はそっちのけで、傲慢にかます。
というかさ、厚木の公演は良いのだよ。本当に心の底から扉座を楽しもうと思ってくれて、途中でも盛り上がると手を叩いてくれたりしてさ。ケツコウ、芝居の見方も知ってるんだよ、応援団は。今日もそういうとこ何回かあったしね。知らない作家でも応援しようとしてくれる暖かさもあるしね。 純粋ホームの試合なんだね。 でも、新宿公演は、そんなに甘くないからね。アウェーとは言わないけど、もっと厳しい視線がある。 厚木に通い出してかれこれ八年、私らは、このホーム公演でまずチカラを貰って、そんで勝負の新宿に乗り込んで来たんだ。 モボ君、誰よりも君にもあの拍手を聞かせて上げたかったよ。
まだ寒い(2005.04.14)
桜が散ったのに、また冬みたい。 今年は徹底的に寒さに負ける。 今日は事務所に行って、エッセイ集の謹呈発送など。そろそろ読んでくれた人の感想なんか欲しいことだけど、まだあんまり読んでもらえてないから、数人に慌てて送りつける。 まあ、公演で売ろう。例のごとく演歌歌手のように。
あとは原稿書きと、今後のための仕込み作業。 週刊金曜日に西原理恵子のマンガ「上京物語」について書評を書いたのだが、それを西原さんが見てくれて、とても喜んでくれたとのこと、知らせを貰う。 嬉しい。 知り合いじゃないけど、ずっと密かなファンだったんだ。 会ってみたいけど、会うのが怖い人だな。 会わない方が良い予感というかな。でも、少しでも繋がりがもててただ幸せ。とても堅い雑誌に、マンガの書評なんて、珍しいと思うがね。でも、本当に感動すんだもの。よいマンガです。
おうちで書斎にいて、モボ日記を覗いてみる。 細かく書いてるね。 あいつ、オレにライバル心燃やしてやがるな、たぶん。 それは良いとして、日記の中に、今度の芝居は、モボ研究家はゼッタイに見落としてはならない、モボの転機となる作品であるとか書いてあるのが、とても可笑しくて良いね。 そうなんだよね、作家ってそういうこと考えるんだよね。自分で自分の芝居の劇評の言葉考えてみたりしてね。 もちろん、激賞している言葉ですよ。 ヤツの頭の中には、もぼの伝記の中での、今回の仕事における苦労の顛末記や名場面とかがすでに書き上がってるんだろうね。 読んでみたいねえ、オレなんかどんなふうに出てくるんだろうねえ。 この頃はまだモボも駆け出しで、演劇史的には二流の商業作家にすぎなかった横内にも、頭が上がらず、忸怩たる思いで、お節介なアドバイスを名古屋郊外のファミレスでハンバーグを食いつつ聞かなくてはならなかった、なんて出てくるのかね…… 読みたいねえ、モボの脳内自伝!
通し稽古(2005.04.12)
夕方から通し稽古を見る。カトケン事務所の旅途中の有馬も来ていた。 突然、冬に戻った寒い雨。 でも、芝居はかなり熱くなってきた。やっとうねりが出てきたね。 先輩たちは、若い奴らが下手過ぎないかと、やたら心配してるけど、わしには今回は若い奴らがよく見える。もちろん下手です。演技とは言えないだろ、それ、ってとこも多々あるにはある。 けれど、それぞれに場を貰って、そこに必死の魂を込める。まずはそれが出来なきゃ何にも始まらないからね。 今回そういう場を貰い、及ばずながら、任されたその場を守り抜く、その取り組みの姿勢、懸命さに嘘がないのが良い。そして、下手ではあるけれど、今までの蓄積がちゃんと感じられている。伊達に劇団で過ごして来てないぞ、っていうね。 はっきり言って、わしがやる時は、こんなに若者たちに場は与えてあげられないだろう。 そういう意味でも、しっかりやるべきだし、こういう機会に感謝すべきだね。 先輩たちが言うほど、おまえら酷くはないよ。むしろ、今回の舞台では立派な戦力だ。思い切ってイケ。そんで公演中に上手くなっちゃえ。 敢えて言うなら、若者たちよりも少し上の先輩たちのもう一がんばりが欲しいね。真情が込められていることは当然のこととして、見せる技とチカラがもっともっと欲しい。 何も難解なところはなく、誰が見てもよく分かる話だから、それに乗っかって、ちゃんと見る人の共感を呼ぶようにしなきゃイカン。 やってるつもりの芝居じゃなくて、ああ分かる、心に沁みる、って感じの芝居な。 でもまだ、ひたすら必死です。分かって下さい、みたいなところに留まってる部分があるからさ。 プロの芝居をやらなきゃな。
ところで、ここで言う、先輩たちと若者たち、って、どういう区切りなんだろうかな。 はっきり言って、座長のわしもよく分かってない。 高木が若者たち、の一人ってことは確かなんだがな。 一番、みんなから下手すぎねーか、って言われてるヤツ。今日も通しの終わり頃、下手ですか?って自分で聞いてきた。 もちろん下手だよ、って応えておいたけど。 だからって、今慌ててテメエが、小手先の技覚えようったって、うまくいくかい。今はもう迷わず、稽古でやってきたことを舞台でやることに集中しろ。 技がねえ分は、キモチと気合いで補えよ。先輩たちもみんなそうやって、やってきたんだから。 まずはそれを見て頂きな。 やがて、それ以外のモノでゼッタイ見せなきゃいけない時が来るんだから、先輩たちみたいにな。その時に出来るようになってりゃいいんだ。
稽古&パーティ(2005.04.10)
2度目の通し稽古。今日の稽古で、はっきりと光明が見えた。やってる本人たちはまだ霧の中であろうが、私には見えた。もちろん、その霧の中から、一筋の光明を頼りに、無事歩み出さねばならぬわけで、そういう意味では、まだまだ道半ばにも到達していないのかもしれないがね。 でも、このまま信じていけば、辿り着けるから、迷わず行けよ、行けばわかるさ、なのである。 扉座新時代の創始なのだ。そう簡単にいくかいな。もう一踏ん張り、ふた踏ん張り、最後まできっちり闘ってくれ。 茅野もすっかり憔悴してるけど、闘ってる男の顔だよ。悪くはない。
さて、その稽古終わりで、たかシの所属するトップコートのパーティへ。たかシはくたばって帰宅したが、私一人で参加。 久しぶりに直太朗や、成宮クンたちに会う。 特に直太朗には、本の話がしたかったので、会えてよかった。エッセイ集の中に、そうと名は出してないが直太朗関連の話題があるのだ。そのことを伝えたかった。 にしても、なんと華やかなセレブパーテイよ。東京タワーの真下だぜ。 錦糸町の稽古場から向かったら、ちょいと目眩がした。 さっき愛知の博士のページチェックしたら、だんだん客席が埋まってきたとのこと。 良い傾向だけど、まだちょい早いな。高く飛ぶためには、もっとじっくり雌伏してていいんだ。 より高く飛ぶためには、より深くしゃがまなきゃならない。 昔、何かの本でみっけて、青春時代の自分励ましの言葉にしてたもんさ。 扉座もタイヘン大講演会も慌てるな慌てるな、そんで疲れ切るな。余力を残して、中盤戦を凌げ。 そしたら必ず結果が、真実を語ってくれる。 明日は、北九州の閉会式音楽劇に出てくれた、チビ玉、嘉島クンの舞台を見に、アートスフィアへ。
稽古場へ(2005.04.08)
満開である。そして暖かい。私の家の近所の、桜並木も今が盛りでござる。ついさっきまでフラフラと桜を見上げて歩いていた。
今日は昼から「語り継ぐ者たち」の稽古場へ。 モボ鈴木の手によるまたまたの改訂箇所が数カ所あって、そこらを中心に稽古が進んでいる。 でも直すたびに良くなっている。もう、あんまり時間はないから、一同かなり焦り気味ではあるが、ギリギリまで粘る姿勢はなくさないでもらいたいね。 などといいつつ、見てるとやっぱり気になるところが目について、黙ってられなくて、役者を呼びつけては、あーせいこーせい、口出しをしてしまう。 ずっと知らんぷりしておいて、いきなり現れ、アレコレ言われても迷惑だろうな、と思いつつも、遠慮の気分にもなれず、とりあえず思ったことは言っておこうと思い、素直に思うことを言ってきた。 ま、テキトーに聞き流すとこは聞き流すだろう。 そんなわしが毎日現れるのは茅野も役者もウザかろうと思い、次は土曜の通しへの出現予告をしておいた。 これでも気は使うのである。 今日の稽古では全貌は見えなかったけど、前回、首をかしげたとこがかなり風通し良くなっているので安心した。 モボの思いは熱く、しかも純粋でストレートで、好感は持てるけど、展開に甘さがあって、思いの空回りみたいなとこがあった。そこをも一度、構造からくみ立て直してくれたので、人物の出会いと別れが鮮明になって、芝居どころが増えた上にクリアになってきたのである。 役者によいパスが出てきた、って感じかな。 余計分かりにくいかもしんないけど。 役者がシュートして、点を取れる条件が整って来たってかね。あとは役者がちゃんとやれば、泣けるし、感動できるっていう。 今日はたかシやまりやのネジを巻いて帰宅。 君たちが引っ張ってくれよ。 まりやを扉座に結びつけたのはたかシだけど、舞台での共演は初めてなんだ。そーいう意味でも良い作品にしなくちゃイカン。
帰りがけに、今年開校の若井田さんのサーカス学校を覗く。天井からティシュやロープをぶら下げて、レッスンしていた。 予定より少人数のスタートだけど、優秀な生徒たちなのだそうな。 見込みのある生徒は、愛知博にも投入すると先生は意気込んでおられた。 明日は事務所で取材とか受ける。 トニセン演劇が十周年で、記念の本が出る予定なんだそうな。
史上初(2005.04.05)
こんなに寒い花見は初めてじゃ。もうオカマの日だというのに、まだ花も五分咲きにもなってない。そんななかでも、今日は新研究生の入所式で、花見だとずっと前から決まってたから、計画はそのまま進められたのである。 そしてひたすら寒かった。 今年の入所は二十四人。 私は面接の時にすでに会っている。はずなのだけど、正直に言って、ほとんど覚えてなーい。こんな人いたったけ、状態である。 私の脳細胞がヤバイのか、それとも役者志望のクセに印象に残らない奴らの個性が弱いのか。たぶん、どっちもあるね。 ま、これから大いに存在感を獲得してって貰おうじゃないか。 厳寒の錦糸公園はわしらのほかに花見なんかやってるグループはなかった。 それでも、十時近くまで震えながら、花もろくに見ずに飲み食いしてるわしらだった。偉大なる馬鹿である。 そんで今日の出し物の中で、一番良かったのは、2年目の上土井と新原の裸白塗り相撲。2年目生き残りの実力を新人たちに大いに見せつけた。 この寒さの中、お集まり頂いたゲストの皆様に感謝。 春秋社の小島クンが新刊『夢見るちからは眠らない』を持ってきてくれて、ゲストの皆様にお配りしました。 新エッセイ集、いよいよ世間にお披露目であります。
土曜日(2005.04.03)
錦糸町の稽古場へ。 「語り継ぐ者」の初通し稽古。しかし、私は久しぶりの稽古場。すでに今年の研究生たちも参加している。一応全員、私が面接し、入所を許可した若者たち。(のはず)でも、正直に言って、一回きりのことだし、あんまり見覚えのない感じの者も少なからずいる。 何よりも、本当に久しぶりに劇団員たちと会ったのと、うじゃうじゃと見慣れぬ若者たちが狭い稽古場に充満しているその様子に軽い目眩を覚える。 相変わらず、激しい祭創りをしとるのう、茅野イサムという感じ。 さて厚木の初日までまだ2週間前。なのに、すでに通し稽古。 というか、とにかく急いで全貌把握というのが、茅野のスタイルなので、ここからまた稽古が深まるのであろう。 なので感想をいうのは、まだ早計ながら、扉座らしくて、でも扉座にはなかった芝居になる予感。 分かりやすくて、その上楽しくて、良い。 わざわざ鈴木クンとイサムに名古屋まで来てもらって打ち合わせた部分は、かなり良くなっていて、笑えて泣ける部分が際だってきた。 ただし、私としては、戯曲的にも、役者の役作りの点でも、まだまだ注文があり。余計なお世話といえば、余計なお世話だけど、まだ時間があることだし、何よりも最後の責任は私にかかってくんだから、言いたいことはとりあえず全部言っておいた。 ただ、前回の「そらにさからうもの」の時ほどは、深く介入せず。あの時は、スタッフ会議とかにも口出ししてたからな。だが今回は、茅野とモボ君の決定にすべてを委ねる覚悟である。 任せてあるんだから、任せなきゃな。 でも、ゼッテエ面白くしろよ、というプレシャーだけはかけておく。 モボ君は、今もまだ唸って、戦い続けていることだろう。けれど、彼も勝負の時だ。ここでがんばらなきゃイカン。 ということで、皆さん、扉座のために命を削るモボ先生に熱い励ましを送ってくれ。 その後、山田まりや行きつけの近所の韓国料理屋に行って、飲みメシ会。久しぶりのまりやはとても元気、たまたま店にいるお客にチラシを配って、見に来て下さいと営業をする。そんでわしらの目の前でチケットを本当に売った! すごい奴だと思わないかね? そういえば、まりやは愛知出身だった。「タイヘン大講演会」の最後のメッセージのところで出てもらっても良かったんだなと、この時気づく。 扉座公演のチラシとか持たせて「未来へ!」なんてね。タイヘン大講演会見てない人には何のことかわからんだろうが。 安藤美姫ちゃんに出てもらうことで頭がいっぱいで、すっかり忘れてた。スマン、まりや。しかし、昨夜の営業の様子を見ていて、わしはこいつとずっと芝居をやってこうと改めて思ったぜ。 明日は研究所の9期生の入学式と、歓迎花見。 思えば、まだ入所もしてない若者たちを、使ってるんだね、茅野イサム。すごいことやるようねえ……
追伸 四月一日に、ジンガロを観る。 大きな動きが始まるまでの瞑想タイムのような厳かにして静かな前半部分、結婚記念日のシャンパンに心地よくなっていた私は、不覚にも半分彼岸へ渡りかけていた…… しかし、バルタバスっておっさんが出てきて、手綱を持たずに、馬と踊り出した時、なんか不思議な光を見て、蘇生したというか、突然覚醒した。 それはサーカスでも、アートでもなく、なんちゅーか、神秘体験の儀式のようであったな。 面白いとか、つまんないとか、そういうことを超越した一期一会的な体験であった。 専門的に言えば、 なんかわかんねえけど、スッゲエもの、観ちゃったよ。 って感じかな。 世界にはいろんな人がいて、いろんなことやってるねえ。 わしらも負けずに、いろんなこと考えて、やってこうな。
ところで…… 地球タイヘン大講演会の博士の日記のページがある。 半年間の定点観測記だ。私も時々、登場している。 ちょっと覗いてあげておくれ。 その名も「地球タイヘン大講演会にあける定点観測」だ。 アドレスが分かんないから、検索してください。ってこれじゃ宣伝になってねーな。まあ、田中クンが分かりやすいととこにリンク貼ってくれるだろう。
半年の間に、今のとこ一番地味でなーんの話題にもなってない「地球タイヘン大講演会」をトヨタ館以上の大人気演目に育てるのが、密かな野望なのである。そんで次の上海万博では今回の百倍の予算貰って、なんか分かんないけど、スゴエもの、創ってやんだ。皆協力頼む。
飯田橋(2005.04.01)
やっと桜が咲いた。 久しぶりに飯田橋へ。 事務所で雑用をやる。 国際赤十字館で、改めて聴いて良かった、ミスチルの『タガタメ』を買う。カップヌードルの宣伝で流れてたやつだけど、映像が違うと、これほど印象が違うものかね。 それほど良いんだ、あの映像と音のマッチング。赤星も観て泣いたと言っていた。 万博に行ったら、お見逃しないように。 んで今、タガタメを聴きつつ、次郎長のパンフの原稿書き、など。
明日は髪切り。んで、ジンガロを見にいく。ずっと観たいと思っていたフランスの馬のサーカス。 明日は十七回目!の結婚記念日。
追記 かつて、金沢でやったワークショップ(石坂史郎と大山聡!も同行だった)に参加していた、中学生の東小雪ちゃん。今年宝塚音楽学校を卒業し、歌劇団に入団。 あうら真輝 さんだって。 初舞台で、ラインダンスをやってるんだろうな。 がんばれ! にしても、月日の経つのの、なんと早いことか。 金沢で扉座観たのが、小学生の頃だったんだって。
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