2005年03月                             

お昼の(2005.03.29)

 のぞみ号で東京に帰って来た。
 ダイボール二箱分の荷物は、宅急便で別送。気が付けば、名古屋でもいろいろお買い物をしてしまっていた私であった。
 名古屋は久しぶりに快晴。万博会場が気になったけど、ずっとそうもしていられない。
 少々現実逃避的に、今後の仕事を忘れて、万博で遊んでいたツケがそろそろ回って来始める予感。
 まだ中味は内緒だけど、夏までにやり遂げなくてはならない大仕事も控えている。取りかからなくてはならない時期に来ている。
 
 ここで宣伝。
 新エッセイ集『夢みるちからは眠らない』(春秋社刊)が完成しました。ここ数年書きためていたモノの集大成です。久しぶり、というかようやく生涯2冊目のエッセイ集であります。春秋という小冊子に連載していたモノですけど、今回少し書き下ろしたモノもあります。
 自分で言うのも何ですが、ちょっと気合いの入った文章です。是非、皆さんに読んで貰いたいと思っています。千八百円とちょい高めだけど、待っていても文庫化はされないし、古本屋に並ぶのも当分先だと思われます。
 まあ、私が本なんか出すのは、数年に一度なので、珍しがって買って下さい。もちろん今度の公演の時も売ってます。
 あと今月の『生本』では大講演会に出てくるアイスマンのことを書いてます。私がどんな思いで、アイスマンと出会い、戯れたか、これも是非知って頂きたいと思います。

 あとあと、大講演会に来る人のために新情報を。
 講演会を出ると、隣りに大きな壁画のコーナーがあるのですが、実はそこに私の姿も描かれています。スッゴイ大きいから、普通は発見できませんけど。ヒントは、私の仕事場である、劇場です。絵の中にある劇場周辺を探してみて下さい。

 あとあとあと、これはある時、自分でみっけて驚いたんだけど、最近あちこちでみかける万博のポスターの中に、私がいた。
 大勢の人間がゴチャっとコラージュされた公式ポスターなんだけど、そこに私もいるのである。
 超大型判と、B全版でいる位置は違うんだけど、B全の方は、谷村新司さんの近くである。
 駅などで、退屈な時、探してみてくれ。
 にしても、それを自分でみっけた時は驚いたぞ。赤星に聞いたら、そういう企画は聞いていて私の写真を送っておきながら、すっかり忘れていたそうだ。
 赤星は赤星で、ここ数日は気持ちよく仕事を忘れ、万博見物人になり果てている。やたらといろんなパビリオンの情報に詳しく、あそこは面白くありませんとか、ここが旨いですとか、教えてくれる。事情通である。

 
 


 



ポジティブ(2005.03.28)

 今日は少し暖かかったので、少しご機嫌復活。
 たっぷり寝て、お昼から会場へ。電通予測では、十五万人!しかし、リニモもラクラク座れてスイスイ出勤?
 どう見ても5万人てとこだと思うな。もしかして大失敗なんじゃないのか、この催し。だって予測の三分の一だぜ。
 でも、大混雑だったら、行くのがイヤになったろうから、今日はこれで良し。いよいよ帰宅が近づき、今のうちにと思って、あれこれ見回る。それでも行列の企業館は避けて、マニアックチョイスで。
 今日はどれもがステキで面白かった。
 まずローリー・アンダーソンの庭園イベント。我が愛知県館の側の庭に、ローリーがいろんな仕掛けをしてるというもの。専用の機械を貰って、音やオブジェを求めて自分で訊ね歩くという不思議な企画。
 まだ音楽家・佐藤容子と知り合う前、有り物の音楽を使ってた時期にローリーの曲を使ったのである。『夜曲』の初演で、ツトムが靴下で悪霊退治する時に鳴っていたりした曲だ。(知らぬ人には何のコッチヤだろうが)
 ともかくその我が青春の友・ローリーが、仕掛けた前衛的芸術。万博の庭で、突然、瞑想的な世界に引き込まれる奇妙な体験である。サツキとメイの家への通り道にあるのだが、参加者は私以外ほぼナシ。ローリーも偉大なアーチストなんだけどね。もったいない。
 森の中に置かれた虎のインスタレーションに深く感銘!四月までの限定企画らしいので、それまでに行く人は試してみると面白い。単純に楽しめるモノではないが。
 あと良かったモノ。
 国際赤十字館。
 つまらなさも味わいのうちと思える、ケッタイきわまりないけど、美しく馬鹿げた恋の池イベント。
 アルゼンチン館のちょいデブ、バンデラスと黒ティーバックセクシー姉さんカップルのタンゴダンス。(それを老人と子供たちが唖然として見ている図)
 そんでシンガポール館の宝物の本棚。
 特に赤十字館。これも世間的にはまったく無視されているけど、素晴らしい。
 ただミスチルの曲が流れて、それと合わせて映像を見せられるだけなんだけど、この万博で、私は初めて映像に胸を打たれた。
特別の新技術はない。絵にもサウンドにも。
 でもね、心がある。魂がある。
 ミスチルの歌も、良いなあとしみじみ思った。
 つまりさあ、そういうことなんだよ。
 どんなに新しい技術が生まれても、それを使って何を伝えるのか?それがないのなら、新技術なんか何の意味も持たないってことさ。
 どこに行っても、お金をたくさんかけた、ハイテク映像装置でさ、でも、そこに何が映されているかと言えば、どこもかしこも、同じような地球と宇宙と自然と……
 けれど、ナーンにも伝わってこない。
 そんなもんで誰が目覚めるかよ。
 赤十字の、映像の方が、百倍、目覚めの方舟だぜ。
 頭悪いこと、この上ないよね。
 我がタイヘン講演会も、そういう映像を使ってるから余計に情けない。しかし私らの装置は、量販店で買い集めたご家庭用テレビですからね。それも今時、ブラウン管の!
 加えて言わせて貰えば、わしはただ宇宙と美しき自然だけを映してはいないぞよ。人間の営みとして、悲劇と悪意の姿も晒しているんだ。
 映像にしか出来ない表現としてね。
 しかし、伝えたいモノの切実さとして、我らの営みも、赤十字館には到底及ばないなあ、と心から感服した次第。
 
 楽しみたい人たちには、ナーンにも届かないというか、見向かれもしないパビリオンだけどね。
 しかしなあ、ディズニーランドだと思ってはいかんぜ。ただ楽しみを求めるなら、黙ってデイズニーランドに行かなきゃ。
 ただ、アミューズメント・テーマパークにはない面白さが、ここには確実にある。今日はそれを痛感した。
 シンガポール館もサイコーだよ。スコール体験も傑作ながら、その後の宝物の図書館ね。ゼンゼンお金はかかってないけど、一流のセンスと知性を感じた。
 ドラマがあるんだよ、一つ一つに。
 これには感動した。

 追記
 山本寛斎のスゴサを記録しておく。
 虎がオレンジ色で、龍が黄色という色彩感覚。普通、虎は黄色だろ。でも、それがこーなってる。そして鮮やか。
 私にはない感覚である。
 記憶しておこう。

 さて、いよいよ帰宅の時。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



何でこんなに寒いんだに(2005.03.26)

 昨日オープン。十万人来るかもしれないと電通は言っていた。ので、私も辿り着けない危険があると脅され、すっげえ早起きして他のスタツフと待ち合わせ。別ルートで乗り込んだ。
 んが、まったく拍子抜け。ニュースでは四万五千とか言ってたけど、かなり怪しい。三万人がいいとこだったんじゃねえか。
 しかし、仕方ないと思ったぜ。何しろ寒い。とにかく寒い、絶望的に寒い。雪まで降った!
 地球温暖化に警鐘を鳴らす講演会やってるのがまったく空々しいぜ。地球寒冷化じゃないのか。
 ともあれ、狂気の沙汰のような粉雪の吹雪の中、我々の講演会はスタートした。
 すでに中身は完成してるので、何の心配もなし。ただ、そんな訳で客が集まらない。もともと知られてない上に、入場者が少ないから、客席が埋まらない。
 まあ、わしらは隙間を縫って、後半から一気に話題をさらってく作戦なのでかまわないと思うのだけど、愛知県のお役人さんたちは慌てふためいている。
 見た人の評判が良いので、なのに何で客がいないのか、といろんな方向から責められているらしい。そんなこと言っても公務員は宣伝とか客集めとかしたことないんだから仕方ないんだけどね。
 それでも何とかしなくてはと言うことになって、今までまったく支度の無かった看板などが周辺に立てられることになった。ただしその宣伝文句が例によってダサダサになる気配。
 もちろん私に素直な意見を言わせたら、そんなのヤメテというに決まってるから、とても遠慮がちに、許して下されとお願いされた。
 まあ、一生懸命やりたいという、前向きな姿勢であるし、今更何を気取っても、どうせドンドンださくなってくに決まってるので、どうぞがんばって下されと、言っておいた。四月には、幟だの看板だの、立つだろう。
 でもね、来て来て、って言うと来ないのがお客さんだかんね。扉座で思い知ってるから。もう満員だから来なくて良いよ、なんて言うと、絶対入れろとどんどん来てくれる。
 だから、このまま黙って地道にやって、お手軽な宣伝に騙されるお客なんかいらないんだもん、わしらは。って顔してるのも手だと思うのだがな。

 そんな訳で、初日なのに、会場はガラガラでありました。で、あちこち見物して回った。
 一番良かったのは、イタリアの『踊るサテュロス』だな。圧倒的な本物の存在感。客がいないのをいいことに、しばしそこに立ち尽くして見とれていた。展示の仕方も上手いんだ。洒落ててな。ガラスに入れるような野暮なこともしてないし。
 まあ、この素晴らしい宝物にもお客は来てないんだから、それを思えば、これの良さが分からぬ人たちに来て貰わなくてもいいよな、と思ったな。
 総じて、外国館は楽しかった。まったく準備が間に合ってなくて空のガラスケースだけと置いてるとことかあんだけど、そんなとこにもガイドさんがいて、中身はまだ届いてないです、とか解説してるのがたまらなく可笑しい。
 空のケースの前でな。
 とにかく異国の人たちが、ワラワラといて、文化祭やってるってだけでご機嫌だ。
 反対に、総じてダメなのは我が国の演し物や展示。こんだけ話題になってるのに、なるほどと思わせてくれるのはホントに少ない。あっちの方が客が多いから負け惜しみ言ってる、って訳ではなくてな。とにかくダメなのばっかだ。
 たとえばさ、せっかく生身の人間を表に出して何かやってるのに、その人間に向かって送られるべき拍手が、本物の客より先に、スピーカーから聞こえてくるとかさ。ナメとんのか、テメーらって感じだ。役者と観客、二つの人間に対する愚弄じゃないかね。まあそんな酷いのばかりでもないけど、ほとんどが映像で時間と空間をベタベタと埋めてるだけだものな。
 それも必ず海と宇宙と山と花、生き物ばんざい、みたいな。
 しかしどんなにステキな映像だってさあ、今ドキの映画は何十億も賭けて撮るわけでしょ。それに及ばぬものじゃダメでしょ。
 とまあ、見るもの見るもの、気に入らず、文句ばかり垂れて歩くことに。とにかく寒いから、ただでさえ滅入ってくるのに、誰がオレに元気をくれ、って感じだった。
 別に、自分の仕事だけが良いなんて言うつもりはない。でも、何というか、プロの演出として成立していないものが多すぎないか?
 少しレベルが低すぎるよ。起承転結も序破急もない、工夫もないし、見る人に対する親切、サービスも欠けている。
 こんなことだから、フランスの演出家に何千万も払わなきゃいけないようなことになっちまうんだろうぜ。トヨタがいくら払ったのかは知らんが。安くはないよな。んで、このレベルの中ではやっぱり傑出していて、さすが一流のプロって感じに見えてるしな。
 そんで我が国は、ますますナメられて、食い物にされるんじゃないか。
 敬愛する山本寛斎先生は、そんな中でもしっかりやって大暴れしてくれてたとは思うけど、総体的にダメだから、大きな勢いが生まれてこないぜ。
 でもな、もっと本物の舞台人がたくさん、ここに関わってたら、こんな惨状にはならなかったとわしは思うぞ。とにかく舞台のプロが少なすぎる。
 もっと演劇のチカラを信じてくれよ。アーチストも映像作家もいいけどさ、公演作らせたら、演劇人が一番上手いんだって!
 
 と初日から、吼えるオレであった。でも、寒すぎて、声にならない……
 早く、暖かくなってくれ。そしたら、ブラブラしてるだけでも楽しくなると思うから……

 


 
 

 

 
 
  
 



ここ数日の記(2005.03.21)

 金曜日から三日間、仮営業だった。ニュースでもやっておりましたね。スゴイ人の洪水です。
 金曜日はアイスマンの居る、南チロル考古学博物館の館長様ご一行がはるばるチロルから来て下さった。そして、お褒め頂くというか、思わぬ感謝の言葉を頂く。特に館長さまは、アイスマンが話す姿に感動したと、涙を溜めて言っておられた。
 そんなにアイスマンを愛しておられるのかと、むしろ私が心打たれた。
 アイスマンの呪いは、ツタンカーメンを超えたと言われているけど、どうですかね?なんて質問しようかと思ってたけど、そんな雰囲気ではなく、ひたすら良かった良かったと握手攻め。何より!
 
 夜にはハンズの菊池さんが名古屋へ。菊池さんのお知り合いで元アイドルで名古屋在住の方(トライアングルのマミさん!)を交えて、お食事。さまざまお話。楽しい夜でした。
 
 この日、自分のとこを抜けてトヨタ館とマンモスを見る。トヨタ館は、予測通り、ラスベガスショウ。『O』の世界である。
 そりゃ、お金をふんだんに使って、贅沢にやってくれてるさ。羨ましい限り。
 でもな、出てくる要素は、わしらのやってるものと、まったく同じなのが笑っちゃう。もちろん、向こうは百倍の予算なんだが。見る人が見ると分かるはず、同じじゃんて。
 まあ、元々はわしがラスベガスのショウのアレコレを見て、大いに触発され、こういうイベントに取り組み始めたんだから、マネしてるのはわしの方なんだが。
 はっきりいうぞ。アレだったら、予算さえあればわしらにも出来る。何も、外国から高い金で、スタッフやキャスト雇ってこなくてもな。
 まあ、向こうはブロードウェイで、こっちはスズナリって感じだな。
 マンモスは、ああこれがそーか。って感じ。何も知らずに見たら、普通のゾウの頭と思ったろうな。でも本物見たもんね、と自慢するんだよな、わしも。
 つまんねえ、ろくでもねえ、とか言いつつ、自慢するのが万博さ。大阪の時もそうじゃった。
 ただ一言もの申したいのは、マンモスに行く前に見せられるハンビジョン映像。あんなあ、いくらくっきりはっきり、大きく映るようになったって、それが映し出す、肝心の中身がスカスカじゃ、意味ねえんだよ。
 何だよ、あのやる気のカケラもないガキたちの歌は?見ていて、気持ち悪いぞ。やる気のなさが、スミズミまで、くっきりハッキリ映っててよ。嫌がってる姿しか見えてこないぜ。あれじゃ、映像はボケボケの方がましだっての。
 ちゃんと演出しろよな。こっちはただマンモスが見たいだけなのに、否応なく、見せられるんだからさ。

 さて土曜は朝から熊本へ。
 劇作家大会。親子の演劇体験教室と、杉並の富士見ヶ丘小学校の報告会が私の担当。
 先に乗り込んだ田中クン(扉座エデュケーション部長として参加!)をアシスタントにして必死に取りかかる。
 教室は、熊本の劇団きらら池田美樹座長と、座員たちのワークが素晴らしく、私はほとんど出る幕なし。素晴らしい!そして助かった。
 報告会は、杉並の教育長や、富士見ヶ丘の校長も参加してくれて、かなり充実。ただし肝心の熊本からの正式参加はなし。何度も呼びかけたんだがな。残念。
 夜は居酒屋で、馬刺しとか食いつつ、歓談。
 斉藤憐さんと観世栄夫さん、福田善之さんに串田和美さんなんかもいらした。なんて言うか、昭和演劇史な夜であった。

 翌朝、早起きで名古屋へ。セントレア経由。
 仮営業の三日目。今までガランとしていた会場に人が溢れかえっている。
 で人波をかき分けて、愛知県館へ到着。
 んが、そこには人がいない。他のパビリオンが基本的には、すべて何十分か待ちなのに、我が地球タイヘン大講演会だけは、待ち時間なしのフリーパス。
 人気ねえ!
 というより、皆さん、そういうものの存在を知らないし、その上、講演会場が、とっても分かりにくい場所にあるのである。しかも、ロクな案内も出ていない。
 何しろ、隣の広場まで来ていながら、講演会はどこなの?と知り合いから電話がかかってくる始末である。
 やっぱりこれは秘密上演なのである。
 
 しかし、これじゃ、入り口も分かんないよ、と私は何度も訴えていたのだ。表にもっとポスターとか貼らなきゃダメだって。でも、ハイハイ言うばっかで、誰も真剣に聞いてくれてなかったもんな。
 こっちはいつも、客集めで苦労してるから、その難しさを思い知ってンだよ。面白いモノやってれば、人が勝手にやって来るなんて、そんな甘いもんじゃないからね。
 んで、挙げ句の果てに、講演会というタイトルがマズイとか言い出してるお役人もいるらしい。
 そんなもの、今更何をたわけたこと言ってんだよ、って感じ。
我々は、単なるエンタテイメントではなく、志をもって、メッセージのある演目をやろうってことだったんじゃないの?
 それで1年以上やってきたんだろうがよ。
 うちは講演会なんだって。
 自分のやってることに、誇りがないのかね?
 仮営業で客が来ないぐらいで、慌てるな、騒ぐな、だぜ。
 やがて真実は明らかになるんだから。
 エンタテイメントを標榜しておきながら、ゼンゼン面白くない金の無駄遣いもたんさんあるらしいからね。
 それに比べて、講演会の方が面白いって、どういうことよって、ことに必ずなるから。
 そういう意味では派手に話題になりつつ、フタ開けて大きな期待はずれに終わる方がよっぽどカッコ悪いからな。
 話題にならない作戦でいいんだよ。話題じゃマンモスやトヨタにかないっこねえんだから。当分は死んだふりして、皆が退屈し始めた頃に、徐々に逆襲に出ればいいんだ。
 とにかく、まずは来るつもりの人が、迷ったり、分からなくならないようにするのが先決じゃ。
 
 とまあ、いろいろあるうちに何かカラダの具合が悪くなりそうだったので、日曜は早めに帰ろうとした。
 んが三時過ぎなのに、すでに帰りのリニモは大行列。乗るのに三十分待ち。
 やっと乗ったら、満員の中で烈しい目眩がして、倒れそうになった。
 インフルエンザを貰ったらしい……

 んで昨日はダウン。
 幸い、妻が遊びに来ていて、一晩看病してくれた。
 
 追伸
 『夢見るちからは眠らない』(春秋社刊)の見本が出来上がって来た。
 表紙に私の写真、ちょっと照れくさい。けど、三年がかりで書きためたエッセイ。お洒落で軽い装幀ながら、中身はズシリと重いぜ。
 みんな買ってくれ!
 
 
 
 
 
 



 
 
 
 
 
 



明日プレビュー(2005.03.17)

 冷たい雨であった。今日は暖かくなると予報にあったので、春の薄着で行ったら、スゴイ雨に降られた上に、どーんと底冷えがしていた。
 このままでは風邪引くと思い、何か着るモノはないか、と探すが、会場内にいろいろあるはずのショップはまだ開いてない。唯一開いているのが、キッコロ・モリゾーグッズ売り場で、そこでキッコロTシャツをみっけ、早速購入しトレーナーの下に重ね着した。
 今も私の胸には、キッコロ・モリゾーが張り付いてるぜ。
 さて今日は三千三百回講演に向けて、一日17回回しの試運転日であった。本番では、あと1、2回は増えるのである。
 12時から夜の9時までだ。
 前代未聞だね。
 そのうち、コンピュータが一回だけ機嫌を損ねて、機能が途中で止まった。今までのことを思えば、かなり良い打率であると思うけど、実際にはその一回も起きて貰っては困るので、しっかりとデータをとり、改善策を探す。大変な作業である。
 そういえば、Tシャツを買った関係者専用食堂のあるオフィス棟の入り口に、案内ロボットがいるのである。身長1メートルほどでそこらを自在に動き回ってるカワイイお嬢さんみたいなヤツなんだけど、音声認識が得意らしく、オフィスの来訪者に対して、応対することを仕事としている。
 「いらっしゃいませ、誰にご用事ですか?」
 なんて聞いてくる。
 たとえば、「山田さんに」と言うと、すぐに手元にある表示パネルに山田さんのデスクの場所と内線番号が表示されるのである。
 「ここには山田は三人おります」とか言って、三人分が示される。
 見ていても、なかなか面白い。
 しかし、これがやっぱり、なかなか上手くいかないのだね。案の定、突然止まったり、別のこと始めたりしてしまう。んで、スッタフが必死に直してた。
 どちらも同じね。ロボットは頭は良いけど、とっても気まぐれだ。
 人間みたいに融通が利かないからね。
 「山田さんです!山田さんはどこですか?」
 気まぐれ案内娘相手に、何度もそう言って、同じ答えを繰り返させようとしているエンジニアの兄さんが、不思議に哀しく切なかったな。
 娘はといえば、ゼーンゼン、マイペースで、別の人の名前を何度も表示し返していたがな。
 無邪気な意地悪みたいにさ。

 17回すべてに付き合うガッツは私にはなかった。と言うよりも、正直に言えば、そろそろ飽き始めてさえいる。もうかれこれ、三十回以上は見たしな。
 出来上がると興味が薄れてゆく、私の悪いクセである。
 しかし、キャストが何人もいるモノで、それぞれにまだアドバイスが必要である。こんなとこで飽きてはいけない。
 そのためにも、あんまり集中せずに、気楽に行こうと、勝手に決めて、途中で抜け出し、愛知県館のアテンダントとクルーたちに混じって、名古屋市パビリオン『大地の塔』の見学会に参加した。(飽きぬためである!)
 藤井フミヤ氏プロデュース作品である。世界一の万華鏡。先日、フミヤ氏が『タイヘン大講演会』を観てくれたのである。感想は聞かなかったけど。
 お返しはせねばならぬ。
 オシャレの一言。素晴らしくデザインされた場所。
 まあ、それだけと言えばそれだけなんだが。
 万華鏡はキレイだけど、万華鏡に変わりはないしな。
 もしここが、大人のバーだったり、パーティルームだったりしたら、サイコーだと思うな。ナイトクラブとかね。お洒落な大人の男女の遊び場。セクシーな踊り子がフロアーにいたりして。
 見上げれば、いつも万華が動いて、妖しの世界を見せているのさ。
 
 でも、万博の、大混雑の中で、たとえば2時間待ちでやっと入って、子供が泣いたり、バアチャンが迷子になって慌ててたりする中で、この空間を味わうことは出来るかな。
 ちょっと心配だ。
 青山のガラス張りのプラダブテック(そういえば大地の塔にフォルムが似てるぜ)に、家族連れと団体客が、2時間待ちでどーっと入ってく場面を想像したまえ。そういうことだ。
 せめて七時以降は、大人限定にして、しかもヤボな男同士の入店禁止、必ずパートナー同伴で、しかもお洒落して来ないと入れてあげない、なんてことにしたらいいんじゃないかね。
 とにかく、それぐらい場違いチックにシャレた空間だと思ったな。
 空間だけではない。ユニフォームも素晴らしい。
 もしかしたら、他の企業館よりいいかもしれない。名古屋市の運営なのに。
 まったく奇抜なこともなく、普段着っぽいんだ。そのまま外に行っても、何の違和感もない。でも、ステキ。だから、たぶんここのアテンダントたちは、出来ることならそのまま街に出たいと思ってるはず。
 たとえば愛知県館の『a』とか『千』とかで栄の街を闊歩したいと思ってるアテンダント・クルーがいるだろうか?長久手町だってイヤだと思うんじゃなかろうか……
 残念ながら、それが衣裳の実力ってもんだよね。どんだけ人を浮き浮きさせられるかさ。それを着る本人の気分を、引き立てなくちゃな。
 なんと知的でクール。でも普通、なことよ。オレも欲しいぜ、あの上着。背中になんかカッチョいい、メッセージみたいのが書いてあってさ。お洒落しつつちゃんと地球のことも考えてやがるっぽいんだもんな……上手いよ、ホント。
 聞けば、野口強のコーディネントなんですと。
 一流スタイリストである。最近わしが買ってる、無意味なオヤジお洒落雑誌にもやたらと名前が出てくる、プロ中のプロである。フミヤさんのお友達なんだろうね。
 愛知県館の服にも、最近、ようやく慣れてきてたのだけど、あれを見ちゃうとな、やられたよなぁ、って、ため息が出てしまうねえ。
 フミヤさんの感性が呼び寄せたんだね。世界の椅子の収集家だしなあ。当たり前だけど、お洒落だしね……
 悔しいねえ。
 名古屋市に出来たことなのに、愛知県にはなぜ出来ぬのか。市民参加の企画だからってのは、言い訳にはならない。
 素人起用で行くってのは、プロには出来ない、もっと凄いことをやるために敢えて取る手段なんだから。
 プロより凄くなきゃ、こういう場所でアマを使う理由はないんだ。世界の人たちが注目する場所なんだからね。世の中の人たちは、それを肝に銘じて欲しい。でなければ、他でもない素人本人に辛い思いをさせ、傷つけてしまうんだよ。表現やデザインなんてのは、プロが命賭けでやって、それでも失敗しちゃうようなものなんだから。
 現にこうやって、私なんか文句とか言うんだから。その度に、『a』とか『千』をデザインした人は傷つくじゃない?

 単なる服じゃないか、デザインじゃないかと言うナカレ。
 今、世の中をデザインというものがどれほど動かしているか。いくら愛知がモノ作りの場所だからって、どんなに良いモノ作っても、デザインがダメじゃ、全然売れないじゃんかよう。
 派手にしろとか、目立てとか言ってンじゃないのよ。人が見て、ステキとか、わあキレイっていうもの、人が欲しくなるモノ、着たい、持ちたいと思いたくなるモノを作ろうよ、ってことなんだ。
 フミヤさんには遠く及ばないけど、オレだってなあ、毎年毎年、ギャルソンだ、プラダだって、どれだけ高い買い物してると思ってンだ。単に防寒とか、裸隠すためだったらいらねえんだよ、そんなもの。錦糸町の洋装店フクスケストアで上から下まで、2千円で済みますよ。
 しかし、それじゃ、元気が出ないんだよ。人前に出て、大ボラ吹いてやるぞ、って気持ちになれない。
 でもな、カッチョいい服着てたり、物を持ってたりすると、電車の中でも、ご老人に席を譲るのは当然のこと、重そうな荷物とかあったら、代わりに持ってあげようか、って騎士みたいな気持ちにもなるんだよ。
 それがデザインてもんで、そのために、我々は高いお金を払うのである。
 それをケチると、ダメなんだ。理屈こねて、否定してもダメなんだ。感覚的に、それは要らないというならいいけどさ。その人にはもっと別なデザインが必要なだけだからさ。
 だってね、そこをケチる人、否定する人は気持ちが弾まない。愉快なことが周りに起きない。思わぬ出会いに恵まれない。そーいうものなんだ、諸君。
 何も、高ければいいというのではないよ。名古屋制服だって、決して高い物じゃないと思う。どこにでもあるような服の組み合わせに過ぎない。でも、そのコーディネイトにとびきりのデザインがあるんだよ。人を楽しくさせる。元気にさせる何かがな。
 
 大地の塔は、お洒落なだけだし、デザインがあるってだけだよ。
 はっきりいって、万博の人混みの中では、その魅力は百分の一ぐらいになるだろう。
 でもな、デザイン、ってもののチカラを我々はもう一度、考え直すべきだ。
 素晴らしいデザイン、ってだけでもスゴイ価値なんだって。わざわざ建築物見るだめにだって、大勢の人が動く時代なんだ。そんなデザインのためなら、フミヤさんに高いギャラ払ったって当然だって。
 私は私に任せられた範囲で、少しでも美しく、その世界をデザインし尽くそうと思っているし、そうしたつもりだけど、哀しいかな、愛知県館には、全体を統一してデザインする人がいなかったな。
 建物から、装飾から、物の配置、スタッフの衣裳まで全部を統一するデサインに欠けてるよなあ。部分部分は良いとこいろいろあんのになあ……
 それにしても、それをトヨタ館がやってるとかならイザ知らず、名古屋市に出来たんだよ。それが謎じゃないか。県の方がチカラがあんじゃないのかよ?大地の塔は、ど真ん中に立ってるしな。うちは環状線の外側だよ。
 なんでこんなに差があんのよ、って愚痴を垂れたら、一緒に見学に行った愛知県館のスタッフが言った。
 しかし、これは単なる建造物ですからね、スタッフの数だってゼンゼン少なくて済みますから……余裕が違うと思いますよ。
 そうだね、我々は中身作りで精一杯だね。
 
 んで結論、私たちは中身でがんばる。
 確かに、いくら着飾っても、中身がダメなヤツはダメだ。それはお洒落をしない以上にダメだと思う。それに、ダサイ格好してても、中身がとびきり良い人は、誰よりもステキに見えて、そのスタイルがファッションになったりもするのだ。
 だってなあ、今出てるブルータス、ファッション特集なのに、その一部はダライ・ラマ特集だぜ。
 そうだ、俺らはダライ・ラマを目指そう。
 スッゲエ、飛躍だが、名案ではある。
 
 明日は朝から、一般にお披露目。
 いよいよ公開、ダライ・ラマ館。

 本日は大論文!
 追伸 
 小島君から、新しく出る本の見本が出来たという知らせ。
 「カッコイイすよ!」って。
 本当だろうなぁ。
 

  
 


 
 
 
 
 

 



名古屋の夜に(2005.03.15)

 昨日の開館式での「地球タイヘン大講演会」を見た人の感想の中で、最も嬉しかったもの。

 アイスマンの顔が美しく見えた。

 これから九月の終わりまで、一日平均約二十回、通算三千三百に及ぼうかという大ロングランが始まろうとしているが、もしもそこに集まる百万近い人々に、この感想を持って貰えたら、本望である。
 人間が人間に対する興味、好奇心を失っていることが、この世界の危機の一番の原因だと思うのである。
 環境破壊も、そこから起きている。
 地球の裏側に住む人たちへの無関心。我々の未来に生きる人々への無関心……
 人間が人間のことを忘れれば、やがて人間は滅亡に向かうしかないだろう。
 この万博には、最新のテクノロジーが溢れている。
 バーチャル映像、ヒューマノイド、それらは人間よりも魅力的に、人々の感心を惹き付け、人気者となるだろう。
 しかし、二十世紀の終わり頃から、進みすぎたテクノロジーが、人間の能力を次々に凌駕してゆき、人間から仕事を奪い、役目を奪い、やがて人間そのものを疎外していったことを忘れてはならない。
 この二十一世紀、我々はもう一度、人間の凄さ、美しさ、面白さを取り戻さなくてはならない。もし人間が、人間よりも、バーチャル映像やヒューマノイドに深く癒され、熱く励まされるとしたら……
 今、ここで、我々人間が、バーチャル映像やヒューマノイドの魅力に負けることがあったとしたら、それこそは世界の終わりの暗示だと私は思う。
 そして、人間こそを主役にするというテーマで、三千三百回行う我々の『地球タイヘン大講演会』には、そういう時代の流れを引き留め、逆転を成し遂げる責任があると思っている。
 バーチャル映像やヒューマノイドは、たとえ人間がすべて死に絶えても、無人の無惨な廃墟の中で、環境を大切に!というメッセージを繰り返すことの出来る存在なのだ。
 でもその光景を真剣に想像してくれ給え。
 人間がすべて死に絶えた後の、ガランとした廃墟で、環境保護を訴える、ロボットたち……
 こういうのをモダンホラーというのじゃないのか?
 
 そういう意味で、人間が人間に向けて語りかける『地球タイヘン大講演会』は実は最後の砦なのだと自負したい。
 人間を使うことは、実はコストがかかるのである。生身の人間はしょっちゅうミスも犯すし、メシも食うし、体調も崩す、そのクセにアレコレ文句を垂れる。だから、皆、無理が利く上に文句も言わない機械や映像に仕事をさせようとする。
 人間の未来を語るべき、万博においてもである。けれどコストのために、最も大事なはずの人間を削除する。
 これこそが今、人類が直面している危機そのものなのだ。
 この愛知県館でも、半年を無事に乗り切るためには、舞台上に人間を使うことは避けてくれというリクエストも強かった。私としては、常時五人ぐらいを登場させて、演目を作りたいと主張したのだが、結局妥協に妥協を重ねて、二人の出演になった。生きた人間の出ないモノに関わる気はないというのが私の基本姿勢であったのだ。
 ギリギリ、ここには人間が生き残った。
 我々にはまだ希望がある。
 
 アイスマンが美しく見える。
 それは何よりも人間を愛しいと思う、その可能性を語る言葉だ。
 生きた生身の人間がそこにいるから、死者である、アイスマンの真実も見えてくるんだ。
 人間のチカラでアイスマンを美しく輝かせよう。

 この日記は、万博関係者もたくさん見てくれている。
 特に、『地球タイヘン大講演会』の関係者にそれをメッセージしたい。
 予算の潤沢な企業パビリオンがメジャーリーグだとすれば、我々の存在は四国の独立リーグとか、欽ちゃん球団みたいなものだけど、奴らに一泡吹かせることは必ず出来る。

おまけ
 愛知県館制服話に新情報。愛知県館の隣りに立つ、地味の上にさらに地味を塗り重ねたような中部千年共生村という中部の県の連合パピリオンは、同じデザインの制服なのであるが、唯一、胸のワッペンの記号が、愛知のソレとは違っていた。昨日のお披露目で、それを知った。
 愛知館は『a』の一文字だとお知らせしたけど、中部千年共生村館は、『千』の一文字であった。
 千だぜ、千!
 これもまた一際趣深いことよ。
 刮目し、記憶に止めるべし!
 たぶん三十年後には、レアものグッズとして、意外な人気を博しているはずだ。
  
 しかし人間はスゴイよね、私、この制服、自分が着る訳でもないのに、見てるだけでイヤでイヤで仕方なかったんだけど、あんまりイヤイヤ言ってるうちに、何かやたら気になってきて、一日に一回、見ないと落ち着かなくなってきた。
 あと少しすると、好きになってしまうかもしれない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



お披露目会(2005.03.13)

 地球タイヘン大講演会の、お披露目であった。昨夜まで、不安だらけだったのだが、スタッフがギリギリまでがんばった。結果、本日三回のプレビューは大成功となった。
 気むずかしそうな政治家の皆さんも、これはオモロイと認めてくれたようで、何より。
 普段は必ず文句をつける議員さんが、黙って帰ったらしい。てか、盛大な拍手して帰れよ、と思うけど、黙っただけでも特筆すべきことなのだそうだ。
 にしても、今日の開館式を見て、つくづく思ったことよ。
 今日はぎっしり、国会議員や名古屋のお役人、議員さんたちが来ていたんだが、みんな同じような背広姿でな。それはまあ仕方ないとしても、それぞれオヤジが一人で来るんだよな。しかし、我々、興業師からすればさ、そういうオヤジほどノリが悪い上に、やたらと冷ややかな視線で舞台を見る人種なわけで、もっと女子供をここに入れてくれよ、と切に願いたくなるんだよ。
 こういう時は、夫婦同伴が原則、ってことに早く我が国もならぬものかね。
 そうすればもう少し、場の雰囲気が和むと思うんだな。楽しむモードになれるだろうよ、なあ?
 そういう意味では、現段階での成功だったとは思うけど、今日の講演は、まだまだ未完成のモノとしかいえないと思うんだ。ライブである以上、本当の観客に出会い、見つめてもらわなくちゃ、表現になり切れない。
 早く、普通のお客さんたちが来てくれる本当の初日を迎えたいと思ってきたぞ。
 
 三回の講演後、藤が丘の居酒屋で、大講演組の決起集会というか、タイヘンだった初日までの慰労会があった。そんで今、ちょぃと酔っぱらっていて、今日の犬飼日記には遠く及ばぬ、まとまりのない文章になっている。私は作家なのにぃ……
 まあまあ、今日はとりあえずのお祝いで、その上に、うまく仕上がっている手応えもあって、フワフワ気分なんだ。
 今日一日は、ちょっと浮かれさせて頂こう……

 一方で明日は扉座の大事な日。
 皆さん、扉座の応援もよろしく頼む!
 

 
 



くたびれ申した(2005.03.12)

 愛知県館『地球タイヘン大講演会』コンピュータもどうやら動き始めて、通し稽古が始まっております。今日は8回、連続通しをいたしました。
 8回だぜ……
 まあ、一回20分なんだがな。そんで半年間を乗り切るために、数人のパフォーマーがスタンバイし、順繰りに練習してゆくのである。
 ここに至るまでに、さまざま問題があったが、今はかなりトラブルもクリアされ、まとまりが出てきた。
 楽しめるものにはなっているのではなかろうか。
 明後日、愛知県館の開館式、そしてプレビューというかお披露目公演。
 万博会場では、あちこちでパビリオンのお披露目式が始まっている。そんで少しづつ各館の様子が伝わってくる。
 聞く限りでは、我々と重なるようなモノはないみたい。今回の目玉とも言えるトヨタのシルク・ドゥ・ソレイユ系パフォーマンスが道具立てがほぼ同じな上に、予算は十倍みたいな様子だけど、向こうは徹底的にエンタテイメントで、こっちは所謂ひとつの芝居だからね。
 そもそも規模が違いすぎるので比べられても困るしな。ただ、費用対効果でいけば、圧勝でありたいと願うし、一泡吹かせてやりたいという野望は秘めているのである。ああ、こいつらに同じ規模の仕事をさせてやりたいと、誰かに思って貰いたいものである。
 それはともかく……
 いろいろ批判も多い万博で、私も参加していながら半信半疑って感じではあったのだが、ここに来て、仕上がりつつある会場や、必死に働く各国の人々の姿を見ていて、なかなか面白いモノなのではないか、と思い始めている。
 私がお祭り好きで、天性の文化祭企画実行委員である、という事情もあると思うけど、正直ワクワクしてくるのだ。
 冷凍マンモスもいるし、サーカスもあるし、世界の珍品に、謎の食い物とか、あれこれゴチャっと山盛りでさ。
 好奇心を持つものにとっては、やっぱり心躍るモノであると思う。単なるテーマパークとは違う、雑多さとゴッタ煮感が愉快なのだ。
 どうみても、開幕に間に合いそうにない外国のパビリオンの様子とか、ああ、万博だなあ、と趣深い。そういえば、大阪の万博の時も確か、どっかの小国がまったく間に合わなくて、開幕から一月後ぐらいにやっと出来た、とかニュースになっていたものだ。
 あの時に、大阪にいて、何回も千里に通った、エキスポ70の申し子としては、たまらない懐かしさもある……

 
 
 
 
 



人間と(2005.03.09)

 私は人間と闘いたい、とアゲイン二十面相は嘆いたが、私は人間と仕事をしたいと、と横内は何度も嘆く。
 機械が思い通りに動いてくれない、というよりも、そもそも何をどうして機械化し自動運行システムに移行するのか、私には理屈も仕組みもさっぱり分かっていなので、謎の待ち時間がひたすら謎のまま、いたずらに過ぎてゆくのだ。
 お昼に劇場に入って、それから小返しを。その小返しはかなり細かく出きて、ここに来てようやく手応えのようなものを掴んだ気持ちになれたのである。
 たった二十分の演し物に、半日かかりの小返しである。その半分以上がコンピュータへの入力待ちという理不尽なものなんだが、それでもまあ、三千回以上の上演のための支度だから、ある程度は覚悟できてる。とにかく上手くいけばいいんだから。
 で、そのともかく上手くいきそうな気がしてきて、さあ、通し稽古をしましょう、ということになると、突然機械が謀反を起こして、挙動不審になるのだね。
 システムが信号通り走りませーん、となる。
 システムも信号も、こちらはまったく分かってないので、ともかくじっと待つしかない。
 そしてジリジリと時間が過ぎ、結局、今日は通しはキャンセルになって、システム確認ということになった。
 つくづく人間というモノは立派だね。機械に頼らず、普通の公演のように人間が操作するようにすれば、なーんにも困らないのである。
 もちろんミスはあるが、馬鹿野郎、しっかりしろ!と怒れば次は正しく操作する。
 でも相手が機械じゃどーにもならない。怒るだけ虚しくてな。
 今回の万博はロボット祭りみたいに、ロボット大活躍だけど。しかしなあ、人間にはかなわねーよ。少なくとも私は、人間しか信じたくないね。
 
 さて、明日は動くか、劇場電子頭脳……



名古屋会議(2005.03.08)

 一ト月前から遊びに来ると言っていたたかシに、今日は来るなと言いつけて、モボ鈴木(新作作者)と茅野イサム(演出家)を名古屋に招いて、打ち合わせ。長久手に向かう国道沿いのステーキハウス何とか……(忘れた)で。何でわざわざそんなとこで、って感じだけど、どうせだから演劇史上に残る傑作にしようという話になって、作家と演出家はのぞみ号に飛び乗って、愛知県まで台本会議のために遠征して来たのである。
 今気づいたけど、マキノノゾミの弟子の鈴木が、ノゾミ号に乗って来たんだね。このままノゾミがたくさん適うと良いわね。

 まあ、私は今仕上がりつつ台本に対して、好きなこと言うだけ言ってその挙げ句の果て言い逃げである。大傑作の完成は二人に任せて、私は万博をやっつけねばならぬ
 今日は衣裳のキシクたちが来て、衣裳合わせを。
 そんで、通し稽古をやる予定だったのだけど、これがなかなか捗りませぬ。何しろ三千回以上の上演のために、すべてをコンピュータ制御にしないとイカンのだ。ところが所詮は機械のこと、まったく思うとおりには行ってくれない。融通ってもんが効かぬからな、奴らは……
 んで結局、今日はまともな通しにはならなかった。ま、正式オープンにはまだ2週間以上あるから、大丈夫とは思うけどね。
 慌てない慌てない。千秋楽までは半年ある。

 今日、藤が丘駅から万博入り口まで、昨日開通のリニモに乗った。でも、小さな駅で、キップ販売機は五台も並んでいない。んで、今日の時点で、すでに行列が生まれている。でも、まだなーんにも始まってねえんだぜ。万博関係者と、新しモノ好きの人たちだけの利用である。これで、本気で万博客が押し寄せたら、どうなってしまうのか。
 明らかにパニックの予感である……
 
 

 
 



名古屋の(2005.03.06)

 ホテルから書き込んでいる。日曜日の夜。
 エッジというやつを使えと赤星から指令。んで今繋いで書き込めるようになった。
 土曜日は、扉座に帰ってオーディションの二日目。全員の審査を終えて、今年の合格者を決定。まあ、扉座先願の者ばかりではないから、辞退者も出るだろう。十日後にはメンバーも決まるはずだ。
 愛知県館はドタバタで、進行中。二十面相アゲインの如く、機械との闘い。何しろすべての場面転換がコンピュータ制御で行われなくてはならないのである。その上に、生身の役者も出てるから、その連携を取るのがタイヘン。って私はたいしてタイヘンではなく、スタッフがひたすらタイヘン。
 しかも、私が普通に芝居創ってる感覚で、突然カットしたり、変更したりするからね。しかし、一言セリフを切るだけで、全体のコンピュータ入力にも変更が生じてしまうのである。スタッフさんたち、ちょっと涙目。
 本当にごめんなさい。今度、一席設けますからと平謝りである。
 とはいえ、20分の演し物だからね。通常の芝居の6分の1なんだから、まだ余裕はあり。
 今度の日曜日が愛知県館の開館で、それが第一のお披露目になる。
 
 さて明日、名古屋に茅野とモボ鈴木が来ることになった。『語り継ぐ者たち』について、名古屋で語り合うことに。
 
 



明日から(2005.03.02)

 明日から名古屋だ。土曜日にオーディションのために一日だけ、帰ってくるが……
 しばしはホテル住まいである。
 今日はお昼から事務所で、田中クンと劇作家協会熊本大会でのシンポジウムのための支度をしていた。その後、新宿で今年のもう一つの大仕事のための打ち合わせ。中身はまだ内緒。これも名古屋に行く前に、決めておくべきことであった。
 そんでいろいろ片付けて、いよいよ名古屋だ。
 赤星はすでに先日から、ずっと名古屋に住んでいる。会場近くの瀬戸市というところにアパートを借りて。そう、瀬戸物の、瀬戸である。
 扉座メンバーは誰も関与してないけど、若井田さんグループのパフォーマーたちがこれから閉幕までの半年間、愛知に滞在するのである。赤星はプロデューサーとして、彼女たちのお家を整える使命があったのだ。
 最初は私も瀬戸の辺りに泊められる予定だった。そこからの方が会場に近いのである。会期間近から始まるだろう、周辺の大渋滞も心配だしね。
 しかし、私は断固としてそれを拒んだ。だったら行かないという勢いで。
 どんなにタイヘンでも、遅刻しないようにちゃんと行くから、名古屋の街に泊めておくれと哀願した。
 だって、なーんにもないらしいって、噂を聞いたんだもの。かの地には……

 そんで赤星からの知らせに寄れば、今赤星のいるところにはホントになーんにもないらしい。環境はとても良いらしいけど、銀行のATMさえ遠いらしい。そんで仕方ないから、十一時には寝ています、といっていた。
 
 わしも、そんなとこに住めば、意外に精神のリハビリになるのかもしれんがな。瀬戸物と戯れたりしてな。
 いや、やっぱり退屈は嫌じゃ。わしはわさわさしてる人混みが好きなんじゃ。
 んで、わしは愛知で最もわさわさしてる辺りに、明日から住む。
 ますます精神が歪むかもしれんが、これでよいのだ。

 パソコンは持って行くけど、ネット環境はどうなんだろう。日記更新、しばし途絶えるかも。
 まあ、犬飼日記がつないでくれるだろう。
 劇団はそろそろ、清水の次郎長、製作にとりかかる。
 今回は久しぶりの厚木もある。成功させねば。
 
 
 
 
 





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